第69話 今日は課題の制作だ

 GW後半4日目の5月4日。


 一昨日は海外へ買い物。

 昨日は海で魚釣り。

 そして今日は僕達は工房に来ている。

 そろそろそれぞれの課題に手を付けようという事になった訳だ。


 僕の方は基本フレームの組み立てに入る。

 折りたたみに必要な金具は3Dプリンターで肉厚のオリジナルを作成した。

 何とチタン合金という豪華さである。

 これはロビー先輩がバイクのフレームを作った際のあまりをいただいたからだ。

 おかげで頑丈かつ軽く出来ている。


 組み立ててバネとネジ止めをして、折りたたみを何度かやってみる。

 うん、問題は見当たらない。

 強度は大丈夫そうだし折りたたみ後のサイズも予定通りだ。

 まあそう設計したから当たり前ではあるのだが。


 後は固定フロートと重量可変型フロートの取り付け及びMJ管の取り付けだ。

 今回使うMJ管は前にシャッターが着いていて、シャッターの開け閉めで吸入空気の量が調節できるタイプ。

 全開ならほぼ200N程度の出力があるハイパワータイプだ。

 しかも周囲の魔力で勝手に動くので燃料不要。

 本当はその背後に魔力式ヒートパイプを付けると更に出力が上がる。

 でもそうすると折りたたみ時に熱が籠もりそうなので今回は断念。


 なお電子制御等は一切付けない。

 その代わり浮力を出来るだけ中心から離れた場所で発生させ、ひっくり返ったりしないよう構造でバランスを取る形式にする。

 操作も基本的に自転車用のワイヤーで、電気すら使用しないアナログ設計だ。


 ハンドル下に自転車用のダウンチューブ取り付け型シフトレバーを左右分付けて、右が浮力調整、左がMJ管の出力調整。

 そして左右のブレーキレバーでMJ管を首振り調整させる。

 ハンドルは固定。MJ管の首振りと本人の重心移動で転回や左右移動等を行う予定だ。

 空飛ぶ魔法道具だが全てはアナログ。

 要はスケートボードとか、いっそサーフィンとかと同じ感じのスポーツ道具のつもりだ。

 そしてワイヤーのレバー比変換プーリーを4個同時に3Dプリンターに入力。

 出来るまでの時間で他の2人の作業を見に行く。


 典明の方は実証模型1号から取り出したデータをエクセルに出力して色々分析中。

 見ても訳がわからないので青葉の方へ。


 青葉の方はそもそも何が飛ぶ機械なのかすら想像できない。

 今作っているのはどう見ても補助外骨格。

 それも無動力タイプだ。

 肩、腰、腿、足で固定するタイプ。

 強いて言えば腕は無く、代わりに右側だけにアーム状の何かがある。


「青葉、これ一体何なんだ」

「ふふふふふ、ライバルには教えてあげないです」

 青葉では無く詩織ちゃん先輩からそんな返答がきた。

 青葉自身は工作機械や組み立て系に慣れていない。

 だから詩織ちゃん先輩が指導役としてついている。


 詩織ちゃん先輩は1年の時に飛行型パワードスーツを工作系の魔法を一切使わず作った実力者だ。

 修先輩も香緒里先輩も全く手伝っていないと言っているし。

 というか詩織ちゃん先輩本当に色々スペックが高いんだよな。

 成績もトップクラスと聞いているし。


 さて、そろそろバネと浮力調整具を組むとするか。

 なにせ全部アナログ操作。

 組んだ後に色々微調整したり乗り方の訓練をする必要がある。

 この島には梅雨は無いけれど、6月までには組んで乗る練習したりを始めたい。


 そんな訳で僕は薊野魔法工業提供の浮力調整具4個を工房中央から取り出し、台帳にチェックを入れる。


 ふと台帳を見てみると、皆さんいろいろな材料を発注しているようだ。

 MJ管や浮力調整具といった定番魔法材料。

 DCブラシレスモーターといった一般部品。

 制御用マイコンやら米国製可変ピッチプロペラやら。


 中には紙粘土100キロというトンデモ注文もある。

 発注・調達担当の修先輩の苦労が忍ばれる……

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