第8章 魔女と魔法と新学期

第151話 新学期は書類整理から

 9月30日木曜日。

 今年は今日が新学期の授業開始日。

 授業終わりとともに3人で学生会室へ。

 例によって先に着いていた詩織先輩が書類の山を仕分けしていた。


「何なんですか、この書類の山は」

「学園祭の出し物の申請なのです。今日から受付開始なのです」


 そうか、今日から受付開始か。

 そう言えば僕が関係するのも2つばかり出ている筈だ。

 ひとつは企業ブース。

 もうひとつは代表者が僕じゃ無い。

 だから書類作成には関わっていないけれども。


「これをどう分けるんですか」

「取り敢えず予算申請や物品貸出が必要なものとそれ以外にわけるのです。ただし学祭実行委員会の承認番号が入っているものはそれ以外分類でいいのです」

 という事で仕分けをはじめる。


「他に電子申請もあるのです。そっちは基本的にソフィー任せなのです」

 という状況だそうだ。


 学園祭とは例年11月3日を含む週に行う一大イベントである。

 魔技高専だけではない。

 魔技大もまったく同じ日程で学園祭を実施する。

 更に特区内の企業の一部もイベントブースを設ける。

 つまりはまあ、聟島特区あげてのお祭りだ。


 しかもこの期間に限り。

 通常出入りが制限されているこの特区内に、申請だけで一般人が入島できる。

 更に宿泊施設もホテル以外の様々なところを集めて特区公社が一括手配する。

 僕も昨年学校の下見がてら来たから状況は何となくわかる。

 典明と知り合ったのもその時だ。


 他の先輩もそれぞれ来ては仕分けに加わる。

 実習で遅いルイス先輩到着時にはほぼ書類は2つに分類されていた。

 そして申請が必要な書類の山は美雨先輩と沙知先輩に、申請が必要でない書類は理奈先輩とエイダ先輩にそれぞれ渡される。


 更に美雨先輩と沙知先輩、及び理奈先輩とエイダ先輩のところからロビー先輩へ送られる書類もある。


 そしてそれらは最後にはルイス先輩のところへ。

 なおソフィー先輩は常に持ち歩いているパソコンをLANに繋いで一人で作業中。


「これはどういう作業なんですか」

 手持ち無沙汰な感じの愛希先輩に尋ねる。


「美雨と沙知は予算や物品申請に問題が無いか確認、理奈とエイダはそれ以外の申請の妥当性を確認。確認した書類のうち工作物や物品加工や火を使うもの攻撃魔法を使うもの等はロビーが安全性を確認して、最後にルイス先輩が念の為に最終確認している訳だ。


 ちなみに電子申請の書類はソフィー先輩が全部確認している。その上で工作関係が入ってロビーの審査が必要な場合だけ印刷してロビーに送っている。


 正直2年生3人とも事務処理のレベルがずば抜けていてさ、理奈を含め4人でやる方が全員で分担するより早い事が去年わかったんだ。厳密には電子申請担当のソフィー先輩を含めた5人体制かな」


「そしてルイスと私が申請等に問題があったり団体間の問題がある場合の調停に出向いて、他の全員で審査済み書類のはんこ押しなのですよ」

 詩織先輩がそう引き継いで、いかにも工房のあまり資材で作りましたという感じの学生会長印を4本、朱肉台と一緒に取り出す。


「では頼む」

 ルイス先輩が読み終わった書類を持ってきた。


「ここの欄にチェックがしてあるだろう、そこに印鑑を押すんだ。可と不可を間違えなければOKだ」

 そこで4人で作業開始かと思ったら。


「典明は私のサブについて。検定魔法を使えるから」

 ソフィー先輩からそんな注文が出た。

 という事で典明が抜け、愛希先輩、青葉、僕の3人体制に。


「つまりここは無能組って事ね」

「適材適所って言って欲しいな」

「愛希先輩、事実は素直に認めましょう」

 等と言いながら3人ではんこ押し作業を開始する。

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