第182話 魔法調理、実演中!

 屋台の方へと走る。

 一見問題は起きていないようだ。

 客足も順調なようだし。


「どうしたんですか」

 と顔を出すと能ヶ谷が僕を見て両手を合わせて拝むような格好をして言った。

「頼む。時間はまだ早いけれど焼き飯第1回を作ってくれ」

 既にトロ舟と材料が用意されている。


「何故に今から」

「やっぱりガッツリ系が少ないようで学内や大学からの客が多いんだ。だから飯物も置いて更に客を寄せたい」

 状況は理解した。


「わかった。」

 おそろいのエプロン付けて帽子をかぶって調理開始しようとする。

 そこで能ヶ谷がちょっとストップをかけた。

「どうせなら派手にやろうぜ」

 そう言って屋台の他の面子に何か合図した。


 ホアンマンが折りたたみ式のテーブルを屋台の前に持ってくる。

 女子2人がトロ舟を持ってきてその上に置いた。

 他の材料も現在揚げ物調理中の面子以外が持ってきてテーブルに置く。

 そして。


「さあ、これから魔法特区名物!魔法調理の実演を行います。所要約5分!お暇な方はどうぞご覧下さい」

 留学生女子陣も呼び込みを開始。

 あ、さては能ヶ谷、俺を客寄せに使うつもりだったな。


 ホアンマンが米をトロ舟に入れながら小さい声でささやく。

「すみません三輪サン。この方が客を呼び込めるとノーガヤさんが……」

 うん、事情はわかった。

 でもまあ、ここまで来たらしょうがないだろう。


 見物人が集まってくる。

 僕もモノセロス改をディパックから取り出した。


 ◇◇◇


 トロ舟1箱分40食、あっさりはけてしまった。

 早々に第2弾を作る羽目になる。

 もちろん続いて第2弾の調理実演をさせられた。


 あっさり売れた。

 ついでに他の揚げ物もかなり売れた。

 更に人が集まる。

 勘弁してくれと思ったところで学園祭実行委員から注意が来た。

 見物人が滞留しているので少し邪魔にならないようにしてくれという事らしい。


 幸い僕達が指定された場所は校舎入口脇で比較的後ろ方向に余裕がある。

 なので通路に対して横方向を向いていた屋台を縦方向に動かし、実演スペース横に確保。

 そして


「さあ魔法特区名物!魔法調理の実演3回目。術者の魔力が切れるのでこれで今日は終わりだよ!魔法調理の技と味を確認するなら寄っといで!」


 ホアンマンが今度はトロ箱を2個作業台に載せる。

「片方は目玉焼き無しでお願いしマス。片方が売れたらもう片方に卵を載せて熱魔法カケマス。それだけなら他の学生でも大丈夫デス」


 うん、完全に計画的犯行だというのは理解できた。

 責任者出てこい!

 きっと能ヶ谷だろうけれど。

 でも客も集まってきている。

 しょうがない。

 そんな訳で第3回魔法調理の実演が開始される……

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