第9章 作って食べてで学園祭

第181話 学園祭が始まった

 10月30日土曜日。

 学園祭が始まった。


 学園祭期間、先輩方は昼間は交代で学生会室で詰めている。

 2時間交替位でだ。

 今年は学生会の人数が多いので1年生は当番は無し。

 一応非常時にはSNSで連絡が来るそうだけれども。


 さて、僕の学園祭の朝は屋台で始まる。

 学生会工房に屋台をしまっているから鍵を開ける必要がある。

 それにまだ、皆あぶなっかしい気がするからだ。

 揚げ用の衣を仕込み、油を入れ適温を確認し、最初の見本を揚げるまで確認。

 ついでに3本ずつ全種類を購入して、学生会室へ様子伺いに行ってみる。


 ドアをノックする。

「どうぞ」

 理奈先輩の声。

入ってみると愛希先輩と理奈先輩だ。


「どうですか、学園祭のスタートは」

「今年は順調だな。特に備品の故障も無いしさ。それより何かいい匂いがするんだけれど」

 愛希先輩、相変わらず食べ物にはめざとい。

 そんな訳で持ってきた揚げ物を開ける。


「お、ちょうどいいガッツリ系」

 愛希先輩ががっつきだした。

 僕も揚げバナナを食べながら壁面に掲示している予定表を見る。


 1年生まで含めた学生会員それぞれの学園祭予定表が壁に貼ってある。

 連絡用だがこれを見ると皆、色々とやっているようだ。

 例えばルイス先輩とソフィー先輩は先程まで学園祭の開会式。

 ルイス先輩はその後攻撃魔法科有志主催の滅多斬り大会予選出場とのこと。

 この大会は巻き藁が何本も並んだ障害物競走みたいなもので、全部を斬って速さと斬り方の美しさ等を競うのだそうだ。


 詩織先輩とロビー先輩と青葉は午前中はロボット大戦関係で不在。

 僕と愛希先輩は午後はエアスケーター試乗会に顔を出す予定。

 あ、変な予定も書いてある。


「この『グレムリンズ公演、水曜午後のおやつ劇場』というのは何ですか?」

 詩織先輩、愛希先輩、理奈先輩、沙知先輩、エイダ先輩、それに青葉が予定に入れている。


「それは大学の方で開催する、魔法に馴染みの無い魔技大生相手のパーティですわ。魔技大の特に魔法工学科の学生はあまり魔法を間近で見る機会が無いので、パーティ形式で色々な魔法を実演するんです」


 なるほど、そんな催しもあるのか。

 確かに身近に魔法使いがいなければ魔法を見る機会とか無いものな。


 魔法工学科で使われるのは工作魔法とか地味な魔法ばかり。

 僕も学生会にいなければ魔法らしい魔法は青葉くらいしか見なかっただろう。

 ただちょっと気になるのが。


「美雨先輩は入っていないんですね」

「のんびりしたいという事で辞退したのですわ」


 なるほど。

 それに美雨先輩はグレムリンズという感じでは無いしな。

 他はいかにもという感じだけれども。


 他にも研究室関係等色々と入っている。

 中には『布教活動』なんて書いている人もいる。

 ソフィー先輩だ。

 何をやるのか興味があるが聞いていいのかどうかわからない。


「朗人、午後のエアスケーター、待ち合わせはどうする?」

「屋台の仕込みが終わったらここに顔を出しますよ」

「わかった。ここで待ち合わせだな」


 ふとスマホが振動した。

 画面を見てみるとSNSが来ている。

 屋台から応援要請だ。

 もう、かよ。

 そう思いつつも。


「何か別口で呼ばれているようなので行ってきます」

「じゃあまた後でな」

 と学生会室を後にする。

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