第169話 更なる強化は無理でした
手に持って軽く魔力を加えてみる。
あの魔法ブロックを持った時のような一気に広がる視界は感じない。
「試験用の水桶を置いておくですよ」
詩織先輩が露天風呂から異空間経由で水入りの桶を取り出して床に置く。
軽く魔力をかけて桶の中の水を冷やしてみる。
うん、簡単に凍った。
でもモノセロス単独の時とそんなに差は無いように感じる。
「気のせいかもしれないですけれど、モノセロス単独と同じ位の威力に感じます」
「いや、それで正解だ」
典明がそう答えてくれた。
「バージョン3は要はパイプの太さを無理矢理モノセロスにあわせた状態だ。だから出力自体はモノセロス単独と変わらない。要は問題点が予想通りかを試す杖だ」
僕の感覚が間違っていなかった事にちょっとほっとする。
「さて、次はただ抵抗を加えただけじゃ無いものなのですよ」
Ver.7と書かれている。
かなりバージョンが上がっているな。
ちょっと不安。
杖を手に持って、ほんの少しだけ魔力を加える。
魔力の加えはじめは急激にこっちの魔力を吸い込む感じ。
しかしそんな感じは直ぐになくなり、圧倒的なパワー感に変わる。
ただあの一気に広がる視界を感じるまでには至らない。
そしてなによりパワー感が人工的。
まるで自転車を漕いでいる最中に後ろから押されているような感覚。
そして魔力の調整がやりにくい。
パワーも魔力の方向性も何か雑味というか安定しない感じ。
僕の腕では魔法を発動させない方がいいかもしれない。
「何か人工的なパワー感があります。パワーそのものはモノセロス単独よりは上ですけれども。あと調整しにくくて魔法を使うのが怖いです」
頷く人2人とがっかりする人2人と中立1人。
「残念なのです。上手く行けば相当な魔力増幅がかかる筈だったのですが」
「プログレスの出力の一部を入力に戻して魔力の吸収を抑えたデス。ただ魔力の流れが複雑でリニア感に欠ける可能性があったデス」
「つまりは面白い素材だけれど、まだ実用には至らない訳だ。上手く行けば魔力機構の更なる増幅に使えると思ったんだけれどな」
残念。
僕が更なるパワーアップを出来るかと思ったのだが。
まあそうそう美味い話は転がっていないよな。
モノセロスの時点で充分にチートだし。
「さて、そろそろちょっと遅めの晩ご飯なのですよ。今日はきっと麺類なのです」
食事を作る面子は僕の他には香緒里先輩、ジェニー先輩、ソフィー先輩。
香緒里先輩もこの部屋にいるので必然的にジェニー先輩かソフィー先輩が作っている事になる。
そしてこの2人は空飛ぶスパゲッティモンスター教の敬虔なる信者(自称)。
という訳で今日のメニューはラーメンかスパゲッティか……
そう思って大広間の方へ皆で出ていく。
あ、パスタじゃ無い。
美味しそうなクリームシチューにマカロニポテトサラダ、ベーコンとタマゴとほうれん草炒め、バケットの組み合わせだ。
「犯人その1はまだ寝ているので犯人その2につくらせたれす」
ジェニー先輩がそう解説。
つまり沙知先輩がまだ寝ているので理奈先輩に作らせたという事らしい。
「ちょっと御飯を炊く腕力が無かったので今日はパンですわ」
20人のよく食べる大学生&高専生に必要な分の御飯を炊くには腕力が必要だ。
何せ米だけで4キロ以上。
でっかい釜と水を含めて10キロ程度のものを上げ下げする必要がある。
パンにして正解だ。
というか理奈先輩、よく作ったな。
上手下手の問題では無い。
約50皿分を作るにはそれなりのノウハウがあるのだ。
ポテトサラダ用のジャガイモを剥くのだって普通にやれば時間がかかる。
色々と大変な筈だ。
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