第59話 第2回新人歓迎釣り大会(2)

 いきなりやられた。

 しかも巨大すぎる。

 あんなのありか!


 ルイス先輩がさっと魔法で氷温処理して船庫に巨大マグロを入れる。

「詩織の事は気にするな。あと詩織は今日は今後マグロも禁止」

「酷いです。キハダはトロ部位が少ないのでもっと釣るのです」

「あとは他に任せろ。他の人は頑張れ。気を抜くと詩織に全部釣られるぞ」


 そうだった。

 慌てて竿と魔法による追加の感覚に集中する。

 棚をあわせて……

 上手く行かない、群れから外れてしまった。


「しかしあんなのが本当に釣れるのね」

「詩織先輩は例外。普通に釣り上げるのは20キロ以下がやっとです」

 美雨先輩がそう説明している。

 確かにこの前は18キロ程度が最高だったな。


 と、今度は船尾後方、典明の竿がいきなり曲がった。

「今日は竿を上げないでいいぞ。絡まないように魔法でコントロールする。だから他は続行」

 なるほど、そんな事も出来るのか。

 さすが会長。

 そして魔法の感覚で見てみると典明の獲物も結構大きい。

 種類は……カンパチか。


 ならばと僕は仕掛けをまた底へと沈めてみる。

 狙いは底の岩陰でうろうろしている大物だ。

 沈めて沈めて、そして岩陰でちょいちょいと動かす。

 案の定何かが飛びついてきた。


 あ、でも思ったより小さいのがくっついた。

 でも結構引く。

 魔法で見ると一応40センチ超えだ。

 重さは1キロちょっと程度。


 実際1キロちょっとの割には結構引いている。

 だが魚には悪いが今回の仕掛けは10キロ超対応の太い奴だ。

 だから半ば強引に引いて引いて竿上げて引いてで海面に寄せる。

 さっとルイス先輩が網で捕らえてくれた。

 同時に氷温処理をしたらしくそのまま素直に船上へ。


「やっぱり小さいですね、これ」

 しかも背中が黄色っぽいしフォルムが妙に丸っこいし変な魚だ。


「いや、これはいい物なのです。ウメイロなのです。白身最高なのです。美味しいのです。どの辺りにいたのですか」

 船上なのに詩織ちゃん先輩に詰め寄られる。

 まだ魚と針を外してもいないのに。

「この真下、一番底の岩周りから出てきました」

 その勢いに釣られてつい正直に答えてしまう。


「ルイス、いいですか」

「ああ、5匹までな」

 ルイス先輩はそう言いながら僕の釣った魚の針を外し、船庫へ入れる。

 そして疑似餌を僕の手元のマグネットに置いてくれた。


「ありがとうございます」 

「いや、これは本当に旨いんだ。ただこの大きさだから刺身で出せば瞬殺される。なので詩織に追加で捕るのを許可した」


 その間にも典明は大物と戦い続けている。

 ただ大分巻いてきているようだ。

「そっちもそろそろだな。大丈夫か」

「大丈夫です」

 典明は立ち上がって格闘中のまま答える。


 一方、女子チームはまだ動きが無い。

 青葉も海面をにらみつけている。

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