第58話 第2回新人歓迎釣り大会(1)

 第2回新人歓迎釣り大会は予定と異なる人員で行われることになった。

 具体的には操船担当と補助担当が愛希先輩と理奈先輩からルイス先輩1人へ。

 そして沙知先輩とエイダ先輩も欠場で代役が詩織ちゃん先輩だ。


 つまりはまあ、きっと僕がやり過ぎたのが原因だ。

 トッピングが全部で25種類でおかゆ2種類に白飯にフォー。

 これを朝から全部制覇しようとした自制が効かない方々が何人もいたのだ。


 現在、その方々は朝から露天風呂でお湯漬けになっている。

 帰るまでには露天風呂から出ていて欲しいと願うのみだ。

 魚を運搬中に全裸女子高専生の中を通り抜けるのは心臓に優しくない。


「飯がうまいというのも考え物だな。決して朗人が悪い訳じゃないんだが」

 僕自身もわかっている、やり過ぎたんだという事は。

 ただ僕にも言わせてくれ。

 まさかあれだけ作った副菜が全て食べられてしまうとは思わなかったんだ。

 残っていれば昼にまた食べられる位のつもりだったんだ。


 特に排骨とか八角効かせた煮豚の塊とか油淋鶏とかエビチリとか。

 あの辺りはお約束の冗談のつもりだったんだ。

 まさか朝からあんなごついのを。

 しかもそれを山盛りにして食べる人間バカがいると思わなかったんだ。

 信じてくれ。


「この勢いだと朗人君、そのうち満漢全席でも作りそうですね」

 美雨先輩が面白いことを言う。

「あれは入手不可能な素材が多いので無理です。でも代替素材を使って近い料理でいいなら、一応は……」


 前に何日かかけて色々やってみたので一応一通りは作れる自信がある。

 まあ熊や鹿やラクダ等は他の素材を使うけれどさ。ツバメの巣も春雨で代用して。

「やめてくれ。これ以上トドを増やしたくない」

 会長の意向はその方向だそうだ。

「皆、鍛え方が足りないのですよ」

 誰より食べているのに人一倍元気な人が言う。


 典明と青葉も危ないところだった。

 隣で、

「今日は釣り大会!新人歓迎釣り大会!」

と何度も注意してセーブして貰った感じだ。


 なお魚探というかレーダー魔法は行きがけに沙知先輩にかけてもらった。

「私から10キロ以上離れると無効になるから注意してね」

だそうだ。

「では、そろそろ現場だな。仕掛けの準備はいいよな」

「あれ、詩織先輩は」

 竿は4本。

 そして僕、典明、青葉、美雨先輩が竿を持っている。


「何なら1年は2本で回しますけれど」

「私の釣りは竿はいらないのですよ」

 でも手釣りの仕掛けとか用意も無いよな。

 ルイス先輩が苦笑する。


「詩織の釣りは空間操作魔法で遊泳中の大物を直接海中からここへ移動させるというやり方なんだ。気を抜くとあっという間に釣果過剰で終わりになる。

 あと詩織に限って条件追加。釣っていいのはカンパチの80センチ以上とイソマグロ以外のマグロの80センチ以上、または他に珍しいのだけ」


「ルイス酷いのです。かなり厳しいのです」

「そうしないとお前1人で終わってしまうだろ。という訳で、釣り開始」


 僕はその号令と同時に疑似餌を海面に落とす。

 今回はそれほど深くない処を高速の魚群が泳いでいる。

 深さはせいぜい10メーター前後。

 なのでその付近に疑似餌をセットしゆらゆら遊泳しているように動かす。

 さあ来い、さあ来い……


 ドドドドドコッ、バタバタバタバタ……

 いきなり背後で轟音と振動が響く。

 マグロ系の何かが甲板で跳ねている。

 見るとかなり大きい……

「ヒットなのですよ。キハダマグロ、27キロ級なのです!」

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