第3章 魔女と過ごす黄金週間

第57話 魔窟の朝

 朝はもうろうと始まる。

 僕は決して朝は強くないからだ。

 でもスマホの時計は6時30分。

 残念だが起床のお時間だ。


 起きた場所は畳敷きの部屋の布団。

 つまり魔窟に一泊してしまった訳だ。

 一応ある程度のガード措置はしてあるけれど。


 この魔窟、もとい保養所は構造としては5LDK。

 露天風呂がある側に面して10畳位の部屋が3部屋。

 この3部屋が更衣室に使ったりしている部屋だ。

 その反対方向、通称社長宅へ伸びる廊下にやはり10畳位の部屋が2部屋。

 中央に巨大なLDK。


 他にトイレ2とか普通の風呂とか浴衣が大量に掛けてあるウォークインクローゼットとかあるけれど、基本はこんな作りだ。

 そして女子連中は大体大広間に皆で布団を持ってきて寝ている。

 わいわいがやがや夜中までやりながら自然に落ちるという感じで。


 そして今僕がいるのは社長宅側の端の部屋。

 ここも10畳の和室だ。

 ルイス先輩は基本的にここに避難して寝ているらしい。

 ロビー先輩は何も気にせず寝たいところで倒れているそうだが。


 なお典明は更に別の場所。

 ウォークインクローゼットに布団を入れて寝ている。

 奴のいびきはうるさい。

 本人もそれを自覚している。


 という訳で起きて服を着替え、歯ブラシと歯磨きとタオルを持って社長宅側へ。

 既にリビングにはルイス先輩と典明が修先輩と朝のお茶タイムをしていた。


「おはようございます」

「おはよう、済まないね朝早くから」

「いえいえ」


 今日は朝食に東南アジア風のおかゆを作る事になっている。

 昨日風呂で青葉と色々話しているうちにそうなってしまったのだ。

 食べ過ぎた後のカロリー優しめですっと入るという事で。


 洗面をした後、社長宅の方のキッチンにお邪魔する。

 よく見ると部屋の構造や作り付けの家具等は隣の保養所と全く同じだ。

 魔法仕様のコンロなども同じである。

 なお、鍋などの調理器具や材料は昨日中にこっちのキッチンへ運搬済み。


 起きる時間にあわせて作れるように、まずはスープから始める。

 今日は基本の鶏出汁の予定。

 ちょっと味を調整してスパモン教徒用のフォー用スープにも使えるし。

 あとはサツマイモ入りの味薄めも作っておくか。


 トッピングも中華鍋2つで交互に作っていく。

 鶏そぼろとか卵そぼろとかゆで青菜とかザーサイ炒めとか。

 細切り昆布の佃煮とか渋め好みのトッピングも作っておこう。

 今日は海釣りの日だから残った生魚も漬けで全部放出だ。

 あ、でも一部は焼いて今日の副菜にしようかな。


 これら副菜を自分でトッピングして食べるという台湾のおかゆ式にするつもりだ。

 要はこの前の朝食のつけ麺と同じ。

 ベースもおかゆ2種類と普通のご飯とフォーという米の麺との選択方式にする。


 そんな感じで20人分、実際の量としては40人分超を仕込んだところで。

 隣の部屋からバタンバタンという音が聞こえ始める。

 女子の皆さん就寝終了という訳か。


 なので麺用の分を取った後出汁にご飯を投入。

 個人的にはジャポニカ米の場合は10分煮込む程度がおかゆとして好きなのだ。

 まあとろとろ系が好きな人もいるし、さらさら系が好みの人もいる。

 どれも間違いじゃ無い。これは単なる僕の好みだ。


 社長宅側も女性陣が起き出してくる。

 由香里先輩、香緒里先輩、ジェニー先輩だ。


「うーん、やっぱり美味しそうな感じだわ。というか朝から豪華じゃないこれ」

「基本はおかゆですけれどね。魚は今日釣りに行くので生は全部放出する方針で」

「魚以外もおかずが20種類以上あるれす」

「まあトッピングはせいぜい1品3分程度で作れるメニューですし」 

「でも凝ったものもあるれすよ。このお肉挙げたのを煮たようなのとか」

「それは排骨ですね。まあ東南アジア風という事で。朝からがっつり行きたい人もいるでしょうし」

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