第75話 実習作品まもなく完成
実は僕の飛行機械は既に完成している。
設計図も概念設計も説明図も完成している。
残りは僕の飛行テクニックだけだ。
そういう訳で一通り発表が終わった後の制作時間で頑張って特訓している。
なお能ヶ谷のあの作品、ゼットンこと田奈先生の趣味を分析した上で作成したそうだ。
田奈先生の制作以外の趣味の一つが古いB級映画。
それを先輩に聞いてこの課題を制作したらしい。
「それって何の映画なんだ?」
「だから言っただろう、ザルドスだって。未来惑星ザルドス。一応あのショーン・コネリー主演だぞ」
わからないものはわからない。
ただ授業内でも3人位ウケていた奴がいた。
特に口から銃器が落ちてきたところでは大爆笑していた。
彼らにはきっと通じたのだろう。
さて、僕の飛行機械の方だ。
安全モード、つまり外側4本のMJ管を使って飛行している時は問題ない。
だが内側4本のMJ管を半分以上開けるとバランスが途端に悪くなる。
傾けると一気にその方向へ滑るように落ちていき止まらない。
最後に噴射を戻すとともに僕自身がハンドル支点に重心移動すればいいのだが。
何度も墜落を重ねつつ練習する。
機体はこの事態を考慮してそこそこ頑丈に作っているから問題はない。
折りたたみも出来るしコロコロ運ぶのも出来る。
なので後は僕のテクニックだけなのだ。
下らないこだわりと言わないでくれ。
これも作品の完成度のうちだ。
何回か目の墜落後休憩していると愛希先輩がやってきた。
手にペットボトルを持っている。
「差し入れ。何か苦労しているようだからさ」
「ありがとう」
素直にいただくことにする。
「あれ、先輩の授業は」
「とっくに4時限終わっているよ」
そんなに飛行訓練をやっていたのか。
時間が経っている事に気づかなかった。
確かに言われてみると陽も大分斜め方向だな。
「ところでこれが魔法工学科の噂の課題?」
他の科にもその話は伝わっているらしい。
「そうです。一応完成したのですけれど、なかなか操縦が難しくて」
「乗ってみても大丈夫?」
そう言うので頷く。
「一応大丈夫ですけれど注意して下さい。これは安全装置無しで全部手動ですから」
そう言って一応操縦方法の説明をする。
まあ3系統の調整だけなので操作説明そのものは簡単だが。
「じゃあちょっと飛んでくる」
そう言って愛希先輩はいきなり浮上用MJ管を全開にする。
ちょっと待て大丈夫か!
しかし途中でうまく噴射調整とバランス取りをした模様。
かと思ったら今度は前方に向けがっと機体を傾ける。
傾けた勢いと後方噴射MJ管の噴出力で一気に加速。
落ちる、と思ったけれど落ちない。
絶妙なバランス感覚で強烈に加速する。
そして100メートルほど先で。
見えない坂に乗り上げるように急激な上昇をして静止。
くるっとその場で回転させてまた急加速で戻ってくる。
おいおいそんな機動こっちの想定外だぞ。
しかもさっき乗機した位置でまたくいっと上方へ向けて半回転して向きを変えているしさ。
何かもう自由自在だ。
さらに今度は左右に蛇行走行始めたし。
わっ、ついに空中一回転まで!
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