第4章 魔女?がチェックの実習課題

第74話 課題発表第1回目

 6月21日火曜日第3時限。

 魔法工学科実習の授業。

 今日から3週間連続で課題の発表だ。


 まだ課題は締め切られていない。

 でも既に完成したり提出したりした者が結構いる。

 そのため早めに発表会が始まったのである。


 なお概念設計やCADによる設計図、制作品説明等の第1回発表者分については講師陣によってまとめられ、レジュメとして印刷され配布されている。

 まあ授業開始直後に配られたのでまだ目を通してはいないけれど。


 僕と典明はまだ提出してはいない。

 典明は実証模型2号で得た情報を解析し切れていない。

 そして僕は例の乗り物を乗りこなしていないからである。


「ではまず、教室内で発表できる概念設計のみの作品から行ってみよう。3番、小山田から」

「はい」

 指名された学生が前に出て発表を始める。

「これは空を飛ぶ畳です。京間の1畳分の畳に……」


 要は畳に浮力調整具を付けただけの安直な発想だ。

 なので特に注目をせずレジュメ順送りに色々読んでみる。

「上に乗ると重心が高くてひっくり返り易いだろう。畳返ししたらどうする」

「……落ちます」

 講師陣が色々突っ込みを入れているがまあいいだろう。


 概念設計のみの連中の内容にはどうもあまり面白い物は無い。

 僕から見れば、

  ○ 正直これくらいは作れるだろう!いや作れ!

  ○ こんなの作ったら失敗するのわかるだろう!よく考えろ!

  ○ こんなの理論上無理だろう。概念設計にすらならない!

という作品が多い。

 ただこれも僕が自分の作品を実作しているからこその視点なのかもしれない。


 以前に修先輩に言われた助言の意味が今の時点でやっとわかった気がする。

『点にはならなくても苦労する価値はあるし、それが後々の発想なり工作能力に必ず現れる』

 多分それは、今僕が感じていること。

 自分の手で作るからこそ見える世界なり視点があるのだろう。


「さて、今回は実証模型は無いから実作だ。能ヶ谷、モノは何処にある」

「屋上です」

「よし、図面で見るより実物を見せて貰おう。全員屋上へ移動!」

 とゼットン様の指示で屋上へと移動する。


 能ヶ谷の作品は、まあ間違いなく問題作と行ってもいい作品だった。

 人面岩である。

 もっと性格に言うと、若干上が小さい三角形風の口を開いた頭部の像である。

 かなり大きい。

 余裕で中に人間が入れる大きさだ。

 あ、ゼットン様が笑っておられる。


「さて能ヶ谷、この作品の名前は何だ」

「ザルドスです。六神体のウラヌスと間違えないで下さい。これはザルドスです。未来惑星の方です」

「よし、飛ばしてみろ」

 能ヶ谷が開いた口部分から中へ入る。

 少しして顔面岩がふわっと浮き上がった。


 浮き上がる仕組みそのものはレジュメに記載してある。

 中で動滑車を使って重いおもりを浮力調整具の中へと入れるだけのシステムだ。


 お、空中で静止した。

 そして何故か口からモデルガンやエアガンがボロボロ出てきた。

 何の意味があるのだろう。

 しかしゼットン様含め何人かが爆笑している。

 彼らのツボにはまったらしい。


 最後、着地して出てきた能ヶ谷にゼットン様は尋ねる。

「もう一度聞く。これは何だ」

「ザルドスです」

「よし、主任教授特別賞で評価Aにしてやる」


 おい、いいのか田奈主任教授。

 そんなアバウトな採点で。

 しかも表情を見る限り講師陣すら意味がわかっていないぞ。

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