第229話 工作魔法?は進化した!

 更に詩織先輩が黒くて丸っこいアジっぽい魚を20匹、キハダマグロ1匹を追加。

「狙うとなるとなかなか手頃なサイズがいないのですよ」

 と本人はとぼけていたが、絶対大物狙いをしていたに違いない。

 キハダマグロなんてそう簡単にいないだろう!


 その分愛希先輩が大量に干物用を捕ってくれたのでいいとする。

 大量すぎるけれど。

 グルクン何十匹だこれ。

 トロ箱2個山盛りはやりすぎではないですか。

 まあいいや。捌く専門家もいるし。


 そんな訳で詩織先輩にロビー先輩を呼んで貰う。

 その間に見本用1匹をさっさとウロコ取って内臓取って頭割って開いてと。

 そうこうしている間にロビー先輩登場。


「さあ、魚処理を頼むのですよ」

 ロビー先輩はそこで一言。

「これは朗人サンが自分で魔法使った方が早いと思うデス」

 えっ。


「工作魔法はあまり得意じゃないですよ」

「工作魔法のポイントは仕上がりのイメージデス。魔力的には修先輩も使えるので問題無いのデス」

 ロビー先輩がそう言うので、僕も部屋からデュオコーンを取ってくる。


「方法は難しくないデス。仕上がりをイメージして魔法をかけるだけデス」

 言われるままに魔力を放出。

 お、これは!

 一気に20匹近くが完全に処理されているぞ。


「工作魔法なんてそんな物デス」

 ロビー先輩はそう言って、そして続ける。


「ところで他に何か必要無いデスか」

「干物でも作ろうと思っているんですが、あとは干すのに網でもあればいいかなと思います」

「なら網は作っておくデス」

 そう言ってロビー先輩は部屋からステンレス板を取って駐機スペースの方へ。


「朗人、また新しい魔法を覚えたのか?」

「何か騙されたような感じですけれどね」

 愛希先輩に答えたとおり、正直自分自身でも化かされたような気分だ。

 でもまあ自分で魚を大量に捌けるなら話は早い。

 それなら先につけ汁作った方がいいかな。


 空のトロ箱に塩だの昆布茶だのみりんだのを放り込んで。

「愛希先輩、この中に半分位、水を入れて下さい」

「おいよっと」

 という感じで干物作成が始まる。


 材料のグルクンが大量にあるので普通の干物と味醂干し。

 詩織先輩が取った黒っぽいアジは思った以上に身が美味そうなので料理の方へ。

 そして大量のグルクン処理、開始だ。

 まずは開き、真水で洗って血を抜いてから漬け汁へ。

 漬け汁は出汁入り塩水と砂糖醤油主体の味醂干し用の2種類だ。


 塩水の方は1時間位であげて水洗いし、干し網へ。

 干し終わったらそろそろ味醂干しの漬けこみ終わり時間。

 味醂干しの方は干した後にごまを上にかける。

 この辺のレシピは前にネットで調べた物そのままだ。

 グルクン用ではなくアジ用だけれど何とかなるだろう。


 干し時間は3時間程度との事なので一度ここで中断。

 昼食作りの方へシフトする。

 捌く時間が魔法で短縮できるので何でも自由自在に出来る。

 気がつけば刺身の柵を切るのすら魔法で出来る。

 盛り付けまで出来る。

 料理魔法は万能料理魔法へと進化した!

 何か素直に喜べないけれど。


 そんな訳で昼は久しぶりに生ハムの呪縛から逃れて海鮮丼。

 17人で爆食開始。

 うん、ちょっと新鮮すぎるけれど美味しい事は間違いない。

 本当は少しだけ寝かせた方がうまみが増えるんだけれどさ。

 でもこの身の固さは新鮮だから味わえるんだよな。

 そんな感じで例によって御飯追加炊飯の上、完食。

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