第228話 マンション屋上で魔法漁業

 翌日は風遊美先輩と詩織先輩監修のもと、露天風呂の更なる改修。

 内容的にはこれで十分なようで、竹垣とか植え込みとかのデザイン部分が中心だ。

 風遊美先輩はガチガチの和風露天風呂派と聞いていたが、確かにそんな感じ。

 風呂のデッキ以外の部分に玉石敷いたり空いている部分に石灯籠置いたり。


 必要な物は風遊美先輩なり詩織先輩なりがその場で買いに行く。

 僕が昨日作った部分も手を加えられ、今までと同じ和風テイストに変化。

 何か本格派の日本庭園という感じになったところで。


 飛行機の午前便組が保養所に到着した。

 一気に保養所が賑やかになる。

 由香里先輩香緒里先輩の姉妹と修先輩、この3人以外は戻ってきている。

 17人だから当然賑やかにもなる訳だ。

 

 結果、遂に生ハム1本目は終了してしまった。

 なお残った骨と脂部分はしっかり料理用に確保。

 そして生ハムは2本目突入。

 まあずっと生ハム漬けだった人の為、生ハム以外のテイストの料理も出しているけれど。

 年末に取っておいた鮭の氷頭なますとか。


 ◇◇◇


 今年は11日から学校開始。

 だから休みはまだまだ残っている。

 そんな訳で翌日の7日。

 僕は詩織先輩に頼み、前にやろうと思っていた事をやってみることにした。


「それなら船で出るまでもないのですよ」

 詩織先輩も簡単に了解してくれる。

 更に愛希先輩も協力してくれるようだ。

「この杖を使えば出来そうな気がする!」

 そんな訳で変わらず生ハム祭りの朝食を食べた後、作業開始。

 

「アジとかサバとかの群れを出来れば狙って下さい。僕の処理速度があるので1人20匹程度で」

「それでは1人1匹しか食べられないのですよ。処理に工作魔法を使えないですか」

「使えると思いますけれど」

「なら倍でも大丈夫なのです。ロビーに工作魔法でやらせるです」

 おいおい。


 まあそんな感じで露天風呂前のデッキにトロ箱を5個設置し。

 海に出ない魔法漁業がはじまる。

「でかいギンガメアジはOKか」

「今回の目的とは違いますが、晩ご飯用ならOKです」

「よっし!」

 愛希先輩がそう言うとともにトロ箱の上でドン!と魚が跳ねる。

 いきなりでっかい外道が来たぞ。


「これは僕より美雨先輩案件ですね」

 僕はそう言って、取り敢えず魔法で魚の体温を下げて仮死状態に。

「呼びました?」

 美雨先輩がリビングから姿を見せた。


「すみません。大物の外道が来てしまいました。シガテラ判定とできれば処理お願いします」

「わかりました。シガテラ毒は……大丈夫です」

 その間に典明が更にトロ舟3個と美雨先輩愛用の包丁2種類を持ってくる。


 そして

「この魚じゃだめなのか」

 愛希先輩がそう言うと、今度は手頃な25センチサイズの魚1匹が跳ねていた。

 グルクンだな、これ。

 確か身の質はちょっと水っぽいアジって感じだったよな。

 なら干しても美味しいか。

 多少小骨があるが干物にして焼けば大丈夫だろう。


「これでいいです。お願いします」

 ドサドサドサドサ。

 一気にトロ箱1個を大量のグルクンがうめる。


「ならこっちはあえて別のにチャレンジするですよ」

 詩織先輩がそう言うとともに、空いているトロ箱1個でまたも豪快に魚が跳ねた。

 誰が見てもカンパチ、それも大物だ。

「美雨先輩案件ですね、こっちも」

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