第112話 縁結びで有名な最古の神社

 やっと寝たかと思えばすぐたたき起こされ、朝の散歩と露天風呂へ強引に付き合わされる。

 確かに朝の露天風呂は気持ちいい。

 夏だけれど標高のせいか快適な気温だし。

 でも女子2人と露天風呂というのは朝から大変心臓に悪い。

 しかも愛希先輩と青葉が相手というのもかなりというかなかなか……


 変に意識をしてしまう僕が悪いのだろうか。

 でもクラスメイトの女子が横で全裸というのはやっぱりかなり危ないよな。

 愛希先輩も馴染みがあるだけにかなり危険。

 体型や顔立ち的には青葉の方が先輩っぽいのだけれども。

 愛希先輩は詩織先輩ほどでは無いけれど童顔だし小柄だし体型も色々スリムだし。

 ただだからこそ見てはいけない感じがするのも確かなのだ。


 結局朝も露天風呂を3つはしごした。

 もう女子の裸はいい、お腹いっぱい。

 まあまじまじと見た訳では無いし、そんな余裕も度胸もないけれど。

 そんな感じで始まったので、寝不足のまま僕はバス車中の人になる。


「本日は函館、湯の川温泉の予定でございます。途中の昼食は回転寿司の予定です。またホテル到着後、夕食後に函館山へ観光に行く予定でございます。その際は市電を使用する予定ですのであらかじめご了承下さい」

 例によって沙知先輩がそうガイドをしている。


「なお詩織先輩から、途中を通過しすぎると弁当が食えない、との苦情がありました。そこで今回は途中休憩をしながら参りたいと思います。

 そういう訳で、早くも誰もいない場所に到達です。由香里先輩、詩織先輩、宜しくお願い致します」


 バスが停車し、そして車外の景色が歪む。

 今度はかなり広めの道路だ。

 廻りはやはり林だが。

 バスが動き始める。


「それではまもなく、出雲大社に到着です」

 え、おい!

 何故長野から北海道へ行く途中で出雲大社なんだ。

 日本地理を間違っていないか。


「こちらにつきましては色々とご要望が多かったので、ガイドと移動担当と運転担当により途中経由地に選ばさせていただきました。

 午後1時30分まで自由時間の予定でございます。なお、すぐに回転寿司の方へご案内致しますので、何かをお召し上がりになる方はその事を考慮に入れてお願い致します」


 社内に歓声が上がる。

 というか何がどうなっている旅行なんだ。

 まあ詩織先輩がいるからどうにでもなるのだろうけれども。

 日本が狭いと馬鹿にしていないか。

 でも。


「私もここは一度来てみたかったんだ」

 と横で愛希先輩が言っているのでちょっと遠慮。

「社会の教科書位でしか馴染みは無いんですが、そんなにここって名所なんですか」

 と聞くだけにとどめる。


「まあ男はそうかもしれないけれどさ。やっぱり縁結びの神としては日本一だし、一度は来てみたい場所なんだ」

「女子旅で行きたい場所のトップ10にいつも入っていますしね。恋人がいない人は恋人が出来るし、いる人は結ばれるって評判なんですよ」

 と沙知先輩が前から補足説明。


「参考までに愛希先輩はどっちですか」

 あ、愛希先輩の動きが止まった。

 何かもじもじしながら考えているぞ。


「ん……いるとは言えない状態かな」

 あ、可愛い。

 先輩だけれどさ

「でも気になっている人はいると」

 沙知先輩、厳しい。

「ま、向こうがどう思っているかはわからないけれどさ」


「何なら教えてくれれば、魔法で……」

「それは反則だろ」

 うん、愛希先輩はやっぱり常識的だ。

 少なくとも目の前の魔女よりも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る