第192話 重い書類

 寮に帰って。


 食事の前に修先輩から受け取った封筒を確認してみる。

 中に入っていたのは分厚い申請書とUSBメモリ。

 それと契約書らしき紙が正副2枚。

 あとは内容の説明書きみたいなメモ。

 なおメモも手書きでは無く印刷だ。

 きっとその方が修先輩にとっては手軽なんだろうな。


 分厚い書類はあの回路の組み合わせについての論文と知的権利申請書。

 普通の技術で特許とか実用新案とかに類するものは、魔法関連の世界では知的権利申請書で行うらしい。

 日本の法律ではなく世界的な条約でそう決まっているそうだ。

 確かエアボードについてももっと簡素な形式だけれども書かされた覚えがある。


 そして契約書は大雑把に言うと、

『この組み合わせを使用した場合の利益の分配は

  ○ 純魔法増幅回路の権利者   2割

  ○ 反復共鳴型増幅回路の権利者 2割

  ○ 組み合わせの発見者     6割

で分配する事に合意します』

というもの。


 なおメモの方で確認すると、純魔法増幅回路の権利者は修先輩で、反復共鳴型増幅回路の権利者は修先輩の研究室での同僚らしい。

 なお組み合わせの発見者というのは修先輩との連名ではなく僕単独になっている。

 だから申請書の名前も僕で、修先輩の名前は補助者として付記しているだけだ


 おいおいいいのか修先輩。

 これだと僕が有利すぎないか。


 知的権利申請書には内容は論文に準ずるとされている。

 論文をざっと見てみる。

 無茶苦茶に詳しい。

 それぞれの回路の原理や特性、この回路にした場合の原理や特性。

 更に注意事項からリファレンス回路3種類の設計図、そして性能特性まで全部書かれている。


 爆発事故を起こしたのは先々日曜日。

 そして今日は月曜日。

 合計8日間でこれだけデータ出して文章書いてなんて事をやった訳だ。


 どれだけ労力をつぎ込んだのだろう。

 少なくとも僕はこの分量の文章や説明書きをこの期間では作れない。

 うん、どう考えても修先輩の労力に見合う単価が低すぎる。

 これはサイン前にもう一度相談した方がいいだろう。

 そう思ったところで。


 部屋のインターホンが鳴る。

 この部屋のインターホンを鳴らしたのは今までに1名しかいない。

 そして魔法で見る限り、今回もその1名のようだ。

 魔法で鍵を開ける。

 典明が入ってきた。


「どうしたんだ、今日は」

 まあ用件はいつもと同じだと思うけれども。


「学祭期間中はどうもジャンクな食べ物ばかりになる。拙者せめて夜は優しい物が食べたい」

 はいはい、いつもと同じ用件了解だ。


「ちょっと待ってくれ」

 まあ用意は簡単だけれども。


 書類を置いて自分の分も含めて晩ご飯を用意。

 作り置きのきんぴらゴボウとポテトサラダがあるからあとはメインだけ。

 西京味噌に漬けといたブリ切り身をタッパーから出す。

 大雑把に味噌を落として皿に載せ、魔法で熱を通すだけ。


 西京味噌は本当は完全に落とした方が上品。

 でも個人的にはちょい味噌残してちょい焦げた程度が好み。

 という感じで食卓へと持って行く。


 きんぴらゴボウは一応魔法で温めて。

 あと味噌汁は手抜き。

 乾燥アオサと出汁入り味噌をお椀に入れて熱湯を入れて混ぜただけ。

 最後に魔法炊飯で御飯を炊けば完成だ。

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