第191話 増幅装置の可能性
そんな訳で修先輩の研究室へ。
場所は大学だけれど学生会室からは結構近い。
前回は緊急事態だから異空間移動魔法を使った。
でも歩いても連絡通路を通って割とすぐ。
ちなみに今回は保護者同伴。
愛希先輩では無く修先輩の保護者というか監視担当、香緒里先輩だ。
研究室の中央の作業台には魔法ブロックとモーターらしき物とこの前と同じ箱形装置が載っている。
僕の魔法ブロックは返してもらっているからこれは修先輩の自分用だろう。
「まずはこの装置。基本的に魔法ブロックはこの前と同じ回路だ。ただ爆発を防ぐためにバイパス回路を新たに設計して組み入れた。後で参考回路図を渡すよ。
で、これが爆発前に実験しようとしていた装置だ」
僕はディパックからモノセロス改を取り出して装置を確認する。
魔法ブロックは修先輩の言うようにほぼこの前と同じ回路。
ただ純魔法増幅回路の直後に回路の分岐が出来ていて、魔力コイルと魔力コンデンサーに繋がっている。
これがバイパス回路になる訳だ。
モーターらしき物はそのまま魔力モーター。
その名の通り魔力を動力源に回転する機械だ。
魔力モーターにも色々種類があるが今繋がっているのは100kw級とかなり出力があるタイプ。
小型電気自動車のエンジン出力並みの力がある。
そして箱形装置の方は……?
「これは高出力型魔力電池の試作版。正確には魔力電池と言うより発魔機とでも言うべき物なんだけれどね。要は付近の魔力を集めて蓄積して、他の魔力を使う機械に供給する装置さ。
まあ普通は1日放置して照明を2時間使える程度。電池にして12V20Ah程度の出力かな。
コストの割にパワーが小さいから実用段階じゃ無い。その筈だったんだけれどね」
修先輩はそう言って、魔力電池のスイッチを入れる。
魔力モーターが回り出した。
ん、確か魔力電池の出力を考えると……
モーターは回り続けている。
全然回転が止む気配は無い。
そして僕が見る限り、魔力は安定して供給されている。
魔力電池から出る魔力は微弱だ。
でも魔法ブロックでかなり増幅化かつ安定化されている。
「こんな出力の魔力電池でもこの増幅回路さえ使えば立派に実用になる。
重量1トンの小型自動車なら、1日あたり燃料無しで200キロ走れる計算だ。
充分に実用範囲だと思っていい。
とすると、どれ位実用範囲が広がるかはわかるよな」
魔力電池が魔力を供給するなら使う人は魔法使いである必要は無い。
つまり一般人でも使用可能。
そして1日200キロまでなら燃料不要。
多分魔力電池というからには2個並列使用とかもできるのだろう。
2個並列で1日400キロまで燃料不要。
そしてそれが各分野で使えるなら。
「内燃機関が全滅しますね。あとガソリンスタンドも」
「まあね。だからすぐには情報の開放はされないと思うけれどさ」
そう言って修先輩は魔力電池のスイッチを切る。
「でも馬車や馬車鉄道があっても自動車や蒸気機関車、そして電車は生まれた訳だ。
最初は実用にならない玩具みたいな物だっただろうし、大金持ちでないと買えないような贅沢品だったかもしれない。
でも今では誰でも当たり前のように使えるようになった訳だ。
働いている人ならちょっと頑張れば中古車位なら買えるだろう、それ位にね」
そう言って修先輩は歩き始め、ある机の引き出しを開けて中から角3型の紙封筒を取り出す。
「そういう訳で今すぐには使えない技術でも発表する意義はある。将来誰かの生活をちょっとでも豊かにしてくれるかな、そんな夢を見ながらさ。
そういう訳でその書類だ。ちょっと分厚いけれど後でゆっくり読んでみて、もし納得したらサインして僕に渡して欲しい。
異議その他はいつでも連絡してくれればいい。SNSで連絡してくれれば出向くなり何なりするし、だいたいここかいつものマンションにいるからさ」
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