第137話 〆の温泉も野生です

「さて、そろそろ次の場所に移動なのです。浴衣を着てこの辺に集合なのですよ」

 という事で温泉から出た。

 すでにお湯から出て涼んでいる人もいる。


 やっぱり浴衣が直視できない状況になっている。

 というか身体に張り付いていてもう丸見え状態。

 いつもの露天風呂のは全裸じゃないかというなかれ。

 シチュエーションが違うとまた反応してしまうのだ。

 それに全裸より着ている方がエロい気すらするし。


 まだドキドキしているうちに魔法移動終了。

 今度は浅い。

 足のすね位までの深さだ。


「さっきの場所より狭いので譲り合ってお願いするのです」

 温度はさっきほど熱くはなく若干ぬるめ。

 お湯の質もさっきのようにぴりぴりとはしていない。


「ここは水量によって入れない時があるのです。今日は水が少なめなので入れるのです。この人数だとちょっと狭いので協力宜しくなのです」

 基本的には川そのものだが、底から温泉が湧いている。

 他にも両側の岩からもお湯が出ているところがある。


「うーん、ここを囲めば少し広くなるかな。広めに囲って川の水を少し弱めれば温度も……」

 この声は美南先輩だ。

「湯船を作る。1分程そこで待って。エイダ、協力して」

「わかった」


 微妙な姿勢のまま待つ。

 いつかアンケートを採った時に出た黒い小人の大型版が複数登場した。

 見ていて面白い位テンポよく川の中から石を取っては積み上げていく。

 そして。


「完成。深さは30センチ位だけどさっきよりは広いでしょ」

 という事でそこそこの浴槽が出来てしまった。

 しかし今の魔法、何なんだろう。

 闇魔法、本当に訳がわからない。

 便利だけれど。


 という訳で改めて入浴。

 お、温度も少し温かくなった。

 でも動かないでいると足とか下に付いた部分が徐々に熱くなる。

 底から沸いているからその場所を塞ぐと熱くなる訳だ。


 明かりは誰かが持ってきた電池タイプランタンの明かりだけ。

 さっきより谷が深いので暗い。

 まあすぐ近くの人の顔はわかるけれど。


「ここでさっきの濃いお湯を薄めるんだ。頭から浸かって」

 愛希先輩が隣にいる。

「愛希先輩は去年もここに来たんですか」

 僕は努めて見ないようにしながら尋ねる。


「いや、去年は希望者だけだったから。温泉と怪談を同じ夜にやって、私は怪談の方だったな」

「あの時は7人でしたでしょうか。月見野先輩、風遊美先輩、修先輩、香緒里先輩、詩織先輩、沙知、そして私ですね」

 理奈先輩だ。


「理奈が面白かった、良かったと言っていたからさ。でも確かに楽しいな。ここまでワイルドな温泉も初めてだ」

「本当は浅いままここで寝転んで、ごろごろ転がりながら全身でお湯を楽しむのが面白いんですけれどね。さすがに20人だと無理ですね」

「でも今だって充分気持ちいいぜ」


 確かに気持ちいいのは確かだ。

 目の毒があちこちにいるのを除けば。

 割と近くに典明発見。

 美雨先輩と盤無し将棋をしている。

 目を瞑って。


 その理由は男として良くわかる。

 美雨先輩は無表情なのを除けばいかにも女子高生って感じ。

 体型とか髪型とかほどよい感じで。

 特にこんなシチュエーションではまあ、言わずもがなだ。

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