第43話 僕の飛行機械概念設計

 つまりどんな飛び方をしたいか。

 自分の空を飛ぶイメージはどんな形か。

 そこから始めようと決めるまでに既に2時間を要した。


 そして考えついたのは、

『もっと軽く、もっと気軽に』

というコンセプト。


 修先輩のヘリコプターよりも、香緒里先輩のスクーターよりももっと軽く。

 そう、自転車すら重すぎる。

 本当は靴に仕込みたい位だが、それだと普通に歩くには不便だ。

 操縦できる最小限で最も軽く。

 単に重量だけで無く見かけすら軽く。

 持って歩いても違和感ない位に。


 色々考えてキックボード型に落ち着く。

 これを浮かせるにはキックボードの重さプラス搭乗者の重さ以上の浮力が必要。

 しかも浮力はある程度上昇力にも回したいから、搭乗者100kgキックボード5kgとして、137kgは必要。

 その辺りから材料を調べていく。

 更にひっくり返らないようにバランス機構を付けて推進力や旋回等も考えてと……


 紙にラフスケッチを描きながらパソコンを表計算画面にして必要な性能等をメモしていく。

 ある程度出来たかなというところでチャイムが鳴った。

 まあ誰かは想像つく。

 扉ののぞき穴から見たらやっぱり典明だ。


「今、開ける」

 開けるとのそーっと典明が入ってくる。

 大分疲れているようだ。


「随分頑張ったようだな」

「ああ。でも悪かったな、抜け駆けした感じで」

「何で」

 僕は特にそんな事は思っていなかったのだが。


「実はな、空を飛ぶという事を聞いて真っ先に思いついた事があったんだ。遠い昔の夢さ。内容は発表まで言えないけれどさ。

 その準備の為の機材を設計していたんだ。あの工房が一番使いやすい信頼できる機材が揃っているからさ」

「で、手応えは」

「悪くは無いね」

 典明はそう言って親指を立てる。


「それで、そっちはどうだい」

「やっと形が見え始めたところかな。明日からはCAD作業に入れると思う」

「ならいいな。詩織先輩が寂しがっていたぜ。せっかく講師陣を一通り用意したのにって」

 あの学生会関係魔法工学科集合は詩織ちゃん先輩のおかげか。

 あとで礼をいっておかないとな。

 まあ明日行けばいるだろうけれど。


「しかし高い壁だな、うちの学生会の先輩どもは」

「でも悪いが、本職はあっと言わせる自信はあるぞ」

 お、大きく出たな。


「こっちはまあ、ぼちぼちかな。ただ悪い物にはならないと思う」

 無論まだ概念段階だ。

 設計図を引くのも大変だし、実作は多分もっと大変。

 それでも多分何とかなるような気がする。


「言ったな」

「まあね」

「何ならどっちが高得点か賭けるか、夕食1回分」


「いや、それは止めとく」

 典明はそう言ってにやりと笑う。

「今回の小生の構想は課題の範囲外の可能性があるからな。正直どういう点数になるかは自信が無い。

 でも空を飛ぶ課題と聞いた時、吾輩はこれが真っ先に思い浮かんだんだ。

 だからこれを提出しないと嘘になる。まああっと言わせる自信だけはあるからな。期待していろ」


 典明は何を作る気だろう。

 気になるが、でもまあ教えてはくれないだろう。

 僕は僕の作品を作る。

 出来るのはそれだけだ。

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