第44話 今日は学生会の工房へ

 もちろん魔技高専と言えども国立高専。

 だから当然の事ながら普通の授業もある。

 しかも90分しっかりみっちりやるので脳みそが非常に疲れる。

 最高でも1日4コマなのだけが救いだ。


 やっと4限終了で放課後になる。

「よ、今日はどこの研究会に行く?」

「そろそろ本命の創造制作研究会を見に行くか。金井さんは」

「取り敢えず攻撃魔法研究会を見に行ってみる……」

 そんな会話が飛び交う中、僕と典明は教室を出て学生会工房を目指す。


 今日はロビー先輩はまだ来ていないからか、鍵が開いていない。

 学生会室に立ち寄ろうかと思ったところで。

「お待たせなのです。本日もオープンなのですよ」

 と例によって突然詩織ちゃん先輩が登場する。


「後でロビーが来たら合鍵を作るので、今日までの辛抱なのです」

 と言って鍵を開け、僕と典明でシャッターを開ける。

 今までロビー先輩が使っていたバイク整備場の一部に色々な資材が積まれていた。

 バイクを停めるスペースは残っているが、かなり狭くなっている。


「これは?」

「香緒里先輩の会社寄贈の課題製作用資材等なのです。これからは毎朝ここに修先輩が車で運んできて、ここにいる誰かが名前を確認して手渡すのです。手渡したら伝票にサインを貰ってそこの箱の中に入れておくです。後で修先輩が回収して帳簿整理をするです」

「なら小生の注文品も確認しよう」

 典明は鞄を奥の端末前に置くと、資材の束の方へ歩いて行く。


「そう言えば詩織先輩、昨日はすみませんでした。せっかく人を集めて貰ったのにあれで帰ってしまって」

 詩織先輩はにっこりと笑う。

 困った事に相変わらず笑顔が魅力的だ。


「それは全然問題ないのですよ。むしろ最初から作る物が決まっている方が少ないと思うのです。例えば私は中学時代オンライン対戦のVRロボットプロレスにはまって、ロボットを設計するのが趣味だったのです。だから魔技高専ここに来たからにはロボットを絶対作るつもりだったのです。

 それで作りたい物は見えてきたですか」

 僕は頷く。


「今日からCADで具体的に設計を始める予定です」

「なら問題ないです。空いている機械では典明の対面が性能がおすすめなのです」

 典明が鞄を置いている端末の対面に僕は陣取る。

 さて、設計を始めるか。

 実はCADの使い方は授業で習っただけで、自由自在には使えないんだけれどさ。

 それでもまずは一番大きい、ボード部分の部品から線引きを開始する。


 しばらく線を書いたり消したりしていると、誰かが近づいてくる気配がした。

「あれ、緑山こんな処で何をしているの?」

 金井の声だ。

「三輪とふらふらしていたらいつの間にか学生会に入っていた。なんでここの工房に居候している」

「本当だ、三輪もいる」


 しょうがないな、と思いつつ作業を停めて顔を出す。

「まあそんな訳で大体ここにいるけれど、何の用?課題の材料か?」

「今日はそっちじゃないわ。知り合いが学生会にいるって聞いて、ひょっとしたらここにいるかなと思って」


「何なら呼んでこようか。多分他の先輩方は上の学生会室にいると思うけれど」

「それには及ばないのですよ」

 そう言って詩織ちゃん先輩は姿を消す。


「えっ、今の人……」

「詩織先輩は空間操作魔法を使うんだ。短距離なら他の空間経由で高速移動できる」

 金井に僕がそう説明してすぐ。

 詩織先輩が愛希先輩、理奈先輩、何故かルイス先輩、何故か沙知先輩を連れて出現した。

 そして金井の視線がある1人で止まる。


「久しぶりね、青葉。魔法は上達したかな?」

 理奈先輩がそう言って金井の方を向き直った。

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