第129話 怪談?『桃太郎』R15指定
3階、まあロフトというか屋根裏部屋だ。
上は傾斜しているが床面積はかなり広い。
少なくとも1階の倍以上ある。
これは、もしや……
「これ、隣の部屋とつなげてないか、壁とっぱらって」
昨年もここに来た愛希先輩が指摘。
「その通りなのですよ。ちょっとだけ修先輩に改造して貰ったのです。出る際には元に戻すので問題無いのです」
「まあ工作魔法と修理魔法だけれどね。杖を使えばこれくらいは何とか」
おいおい、持ち主に無断で家の改装かよ。
隣も借りているからきっとバレはしないだろうけれど。
「という訳で怪談の夜なのです。世田谷先輩、新作をお願いするのです」
「はいはい」
世田谷美南先輩が出てくる。
修先輩と同じ大学3年生だそうだ。
エイダ先輩の姉だけれど血は繋がっていない。
ただ同じ黒魔術使いだとは聞いている。
「では始めます。
昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでおりました。
おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に……」
あれ、これはどう聞いても桃太郎じゃないか。
そう思いつつも聞き続ける。
「雉が飛んできて言いました。桃太郎さん、団子をひとつ下さいな……」
うん、今までは間違いなく桃太郎だ。
他の人も不審な顔をしているぞ。
「そして桃太郎はサル、犬、雉を連れて悪い鬼がいるという鬼ヶ島に向かいました。鬼ヶ島の鬼タチは桃太郎が舟で近づいてくるのを見ると、『人が来たぞ!』と大声でわめき、騒ぎ始めました」
うん、まだ桃太郎だ。
「桃太郎が上陸すると、鬼達が襲いかかってきました。しかし桃太郎は強い。黄金の、いや桃色の右拳で先頭の鬼に殴りかかります。『うわああっ』鬼はそう叫んで倒れました。桃太郎の殴った鬼の顔の右側は大きく裂けて潰れた目玉が落ち、吹き出した大量の血とともに脳漿が浸みだしてきました。
『ふっ、拳が汚れちまったぜ』と桃太郎は独り言を言いました」
今、遠くで何か叫び声が聞こえたような……
鳥の声だよな、きっと。
風のせいか窓がガタガタと鳴った。
「『くそう、よくも仲間を!』
鬼達は棍棒を持って一斉にかかってきました。
しかし鬼の棍棒の一振りを桃太郎はあっさりかわします。
『ふっ、時が止まって見えるぜ』
そして桃太郎は鬼の懐に入ってアッパーの一撃!
『タイガーアッパーカット!』」
グギッ、バタッ。
えっ、今確かに音がしたよな。
それも割と近くで。
話はまだ続く。
「鬼の首は裂け、血を吹き出したままダンスを踊るかのように動いて倒れました。
首から上はもう何処にも見当たりません。
『人間め、残念だが貴様にはかないそうもない。でもせめて女子供を逃がすまでは俺達も倒れる訳にはいかない』
『ならば倒れろ。ペガ●ス流星拳!』
リーダー格の鬼は桃太郎の放つ無数の拳により粉々になり消え去りました。
あたりに残る血しぶきと濃厚な鉄の香りだけがそこに誰かいた事を僅かに物語っていました」
ギャー!
外からさっきより近くで鳥の声が聞こえた。
鳥の声だよな、間違いなく。
ドサッ、バタッ。
きっと近くの別荘の扉が壊れているんだろう。
そうに違いない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます