第63話 宇宙の入口(2)
本当はリアルタイムで無線接続をしたい。
でもそれなりの出力の無線機を積むと法律違反になる。
だから実証模型1号に積載しているのは単なるスマホ。
SMSで最小限の情報を1分毎に送ってくるようになっている。。
これでも上空方向なら50キロ程度は余裕の筈だ。
まあ100キロは無理だから途中で通信途絶するだろうけれど。
「所要時間はどれくらいだっけ」
「行きが1分強。帰りが10分位。このために物理と数学を大分先取り勉強したぜ」
何せ今は物理で力の分解をやっている処だ。
数学も当然二次方程式まで。
加速の積分が速度で速度の積分が距離だ面積だ。
そんな数学は3年生の範囲だ。
だからわからないところは詩織ちゃん先輩や香緒里先輩等に聞いたり教えて貰ったりしたとも典明から聞いた。
「2回目のメールが来た。5キロ地点まで無事到達、現在は下降を開始」
思わず拍手が巻き起こった。
「富士山より遙かに高い処まで行ったんだね」
「5000というとモンブランが標高4800位だっけ」
「あとはこの場所に戻ってこれるか、だよな」
皆で空を見上げるが当然まだ何も見えない。
「そう言えば私の魔法が使えますね」
沙知先輩がそんな事を言って杖を持つ。
釣りの時と同じ感覚が意識内に発生。
「お、すっげえ、ちゃんとこっちに向かってきている」
愛希先輩がそう感動する一方で。
「うわーっ、この為に必死にJava勉強したのに魔法一発で終了かい」
とがっくりくる典明。
「いいじゃないですか。これでアンドロイド携帯のアプリ作りも余裕なのですよ」
「今回はJavaは通信部分にしか使っていないんですよ。この方法が可能なら……
でもまあ、100キロ計画の時にずっと沙知先輩にお願いするのも申し訳ないか」
「私の魔法は単一目標なら100キロ以上でも余裕ですわ。あと1回かければ私の関与が無くても半日は持続しますのよ」
「ああーっ、やっぱり無駄だった!」
典明が壊れている。
まあ無理もない。
GW中にこの実験をやるべく平日は時間を取って色々勉強していたらしいしな。
金曜土曜はしっかり遊んでいたけれど。
「それよりそろそろ来るですよ。私の目にはもう見えているのですよ」
「どこどこ」
「真南、かなり高いところから大きいらせんを描いて降下しているですよ。あ、こっちに機首固定したのです」
確かに何か点が見えるような見えないような……
でもその点は確かに少しずつ大きくなっているような気がする。
ある程度見えるようになったらもう、あっという間だった。
校舎よりも上空をかなりの速さで通過、という処でパラシュートが開く。
そしてだらん、とパラシュートにぶら下がり、地上へ向かって落ちてきた。
典明がダッシュで走り出す。
でも世の中には男子の全力ダッシュより早い移動は色々あるので……
「うん、異常な熱も帯びていないし故障箇所等も見当たらないのですよ」
そう言って持ち上げようとするが、詩織ちゃん先輩は小さい。
実証模型1号の方が大きい位だ。
「撮影はばっちりですわ。離陸から見えなくなるまで、飛来からパラシュートで着地まで、どっちも4K秒60コマ動画でしっかり撮れましたわよ」
学生会広報班筆頭にして副会長のソフィー先輩が三脚を構えたまま言う。
確かに映像があれば発表の際に色々印象的だろう。
特に典明のように実証模型での発表の場合は。
なかなか頼りになる先輩だ。
「修先輩、解析魔法をフルで頼むのですよ」
「うーん、今の地上へ落下したショックも熱応力等による変形も問題無いね。内部も電子回路含めて問題は無し。パラシュートをきっちりたためば問題無いね」
この魔法だけで細かい点検が全て出来てしまうのも強烈に便利だ。
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