第254話 ちょっと観光してみるけれど
そんな訳で動けるようになったのは正午過ぎ。
なのでそれほど遠くへはもう行けない。
美ら海水族館あたりはもう無理だ。
今回は集団での魔法移動は控える方針だそうだ。
理由はなかなかしょうもない。
「いやさ、昨年の夏の社員旅行が税務署にチェックされてさ。何とか日本各地のクライアント使ったりして誤魔化したけれど。そんな訳で予算が出る部分は魔法移動禁止。極力公共の交通機関を使ってくれ」
と番頭こと修先輩が理由を説明。
魔法で長距離移動が可能という事実はまだ公開しない方がいい情勢なのだそうだ。
そんな訳で魔法移動は近距離限定。
だから今日の予定は首里城とか近場限定だ。
そして愛希先輩は今日も絶好調。
「じゃあ朗人、行くぞ!」
今日も僕を振り回す気満々だ。
まあ楽しいしいいんだけれどね。
また市場付近を通っていく。
「何か買うの」
「いや、今日は通るだけ。行くのはバス停」
ちゃんと目的地があるようだ。
国際通りをわたって反対側のバス停へ。
「ちょうどバスが来るから、まずは真面目に首里城の観光でもしようぜ」
お、真っ当に観光なのか。
ちょっとだけ意外に思いつつ、それを申し訳なくも思う。
きっと愛希先輩なりに色々僕の好みなども考えてコースを練ってくれたのだろう。
今はそれに素直に感謝しよう。
そんな訳で守礼門から入っていくつも門を通って。
物見台から那覇市内を見たり真っ赤な建物の門から入ったり真っ赤な本殿の下の本来の本殿の遺構を見たりと。
基本コース通り廻ったらほぼ2時半。
全体として感じたのは、やっぱり日本と文化が違うんだなという事。
少なくとも建物の様式はだいぶ違う気がする。
日本の神社でも朱塗りの場所は多いけれど、あれともまた違うし。
さて、とりあえず観光欲が満足したところで。
愛希先輩が行きに来たバス停と明らかに違う方向へと歩いて行く。
モノレールの駅も過ぎ、角を曲がり、更に先へ。
「愛希先輩愛希先輩、どちらまで行かれるのですか?」
「動いた後は飯だよな、やっぱり」
何かお目当ての店があるのだろう。
「どういう感じの店ですか」
「ベタベタな地元系定食屋」
これは期待していいのかな。
モノレールの駅から5分程度。
マンション風建物の1階に黄色い看板が出ている店に愛希先輩は入る。
うん、いかにも地元の定食屋という感じ。
時間が2時過ぎだからかそれほど混んではいない。
座敷とテーブルが混在し、壁には長々とメニューが貼ってある。
まさに正しい定食屋という感じだ。
「例によって勝手に朗人の分も頼むぞ。ゆし豆腐定食1つとてびち煮付けの定食とそば小サイズとゴーヤチャンプル単品」
昨日も思ったのだけれど愛希先輩、僕の好みを完全に把握済みでいらっしゃる。
食べてみたいと思ったものをバランス良く注文してくれた。
「本当はもっと単品色々注文したいんだけれど、ここは量が多いらしくてさ。だもんでちょっとだけ遠慮した」
単品1つそば1つ付けた癖に遠慮なんだろうか。
でもその言葉の意味はすぐにわかった。
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