第247話 997の次の素数

 今回の改造は、

  ○ ぬる湯

  ○ あつ湯

  ○ 寝湯

  ○ ジェット湯

  ○ 歩行湯

はそのまま。


 その代わり他は全て大移動だ。

 洗い場は北側の端に移動し、1人分増えて9人用に。

 その東側はサウナ、ミストサウナ。

 サウナは以前と同じ。

 でも横に1.8メートル×1.2メートルの水浴槽を別に設置した。


 そしてミストサウナは幅3.6メートル、奥行き5.4メートルと大きく増強。

 床は加工木材をすのこ状にして寝転んで気持ちいいようにした。

 シャワーは天井設置で、引っ張ると下へ伸びてくるタイプを8個設置。

 しかも手元で水温及び水量調節できるヘッドを採用。

 詩織先輩の身長でも届くようひっぱりひも付。


 たる湯は6個まで増やした。

 これは全部温度調整付き。

 デッキ部分はあちこち広げ、更にシャワー部分やクールミスト部分も付けて。


「なるほど、改装するの前提でユニット構造にしたんですね」

「正解。色々注文がうるさいからね」

 とか話しながらも、昼食休憩を挟んで午後3時までの作業で何とか完成。

 スペック的には文句ない露天風呂が完成した。

 そう、スペック的には……


 早速という事でまだ明るいうちからお試し入浴開始。

 そしてスペック的には、と繰り返した理由を僕らは確認する事になる。

 この風呂、前以上に見通しがいい作りなのだ。

 特にたる風呂。

 一番端にあったのが真ん中近くになり、しかもまわりをデッキで囲んでいる。

 つまりまわりから丸見えで、まわりも丸見え。


「うーん、私はミストよりこの寝湯がいいな。お湯の量最高にして浮かぶ感じで」

 愛希先輩、それを上向きでやらないで下さい!

 他にもたる湯の横がシャワーなのでサウナから出た裸女がよく来るとか。

 色々な意味でたる湯が落ち着けない。


 うん、たる湯もいいけれど場所が悪い。

 そう思って僕は前の定位置のぬる湯へ。

 こっちの方がまだ安全だな。

 男子更衣室の目の前だから逃げるのも楽だし。


 ぬる湯南西の隅で足を伸ばして視線は部屋側。

 これが一番楽だ。

 ただここはたる湯ではないので他の方もやってくる訳で……

 早速、前にも良くいらしている方が来たようだ。


「なかなかいい感じになりました。特にミストサウナ、皆さんお気に入りですわ」

 沙知先輩だ。


「今日のお菓子旅行はどうでした」

「さすが風遊美先輩でしたね。北海道から福岡まで回らせていただきましたけれど、どこも茶色い系統のケーキや焼き菓子が美味しいお店ばかりでしたわ」


「全部ドイツ風とかウィーン風でさ。イタリア系とかフランス風とか一切無し。いかにも風遊美の好みだなという感じだ」

 奈津希先輩までいらっしゃったようだ。

 まあ奈津希先輩は隣のあつ湯でストップしたけれど。


「奈津希先輩はフランスに行かれたんですよね」

「そうだけれどさ、特区ここだとどういうのがいいんだろうな」

「今日廻った茶色いシリーズもいいけれど、フルーツ華やかなのも好きなのですよ」

 あ、また1人増えた。

 ぬる湯の僕の正面側に入ってしまう。


「うーん、私は白いケーキも捨てがたいな」

 寝湯から愛希先輩も論議に参戦。

 何やら危険な雰囲気になってきたぞ。

 そろそろ料理準備と称して避難しようかな。


「私はやっぱり生クリームにイチゴのショートケーキね」

 スタンダード派の由香里先輩はぬる湯の反対側端へ。

「私はベイクドチーズケーキだわ」

 ケーキの種類になってきたぞ。

 なお今のは理奈先輩だ。

 ぬる湯の右中程へと入ってくる。


 どうもミストサウナで暖まった後。

 ぬる湯に来るというパターンが出来つつあるようだ。

 既に目の前は見てはいけない状態になっている。

 色々計算を間違えたらしい。


 うん。

 見てはいけないし考えてもいけない。

 そんな時はどうするか。

 素数を数えろと先人は言っていた。

 1は素数じゃ無い。

 だから2,3,5,7,11,13……

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