第12章 Spring has come.

第248話 春休みの前に ~最後の学生会~

 学生会の広報班は優秀だ。

 ソフィー先輩を始め、理奈先輩、沙知先輩、美雨先輩、典明と頭脳的に優秀なのが揃っている。

 だが優秀すぎて少し暴走気味。


 例えば新入生用のパンフレット。

 ルイス先輩の時はA4表裏で1枚だったそうだ。

 それが愛希先輩の時代はA5白黒、10枚20ページの冊子。

 沙知先輩の時はA4モノクロで10枚20ページ程。

 僕の時は確かA4カラーで10枚20ページ程。

 そして今年はA4で30ページ程になってしまったらしい。

 なお原稿はフルカラー。


 もちろん学校側の予算はそんなのに対応していない。

 魚祭りの協賛金の残余等で何とかまかなっているのだ。

 でもその分出来はいい。

 印刷から製本までをまとめて本土の安いところに注文している。

 そのせいもあって商業誌並の仕上がりだ。


 昨日、印刷所から仕上がったパンフレットが製本済みの状態で届いた。

 だから今日は落丁その他無いか皆読んで確認。


「これ、この前の散歩で撮った写真だよな。山頂と神社」

「ぎりぎり間に合いましたので使わせていただきましたわ」

「この『標準的な男子学生の寮の一室』のイラストは典明君の部屋ですか」

「残念ながら拙者の部屋は見せられる状態では無いのでのう。朗人の部屋じゃ」

「なるほど、それで1人暮らしなのに鍋の種類が多いのか」

「本当はフライパンだけでもあと2つはあるのでござる」

 好き勝手を言いながら皆で見る。


 内容的には非常に良く出来ていると思う。

 島の状況、特に暮らし面で必要な事がほぼ網羅されている。

 しかも写真やイラスト入りでわかりやすい。


「こういうのを作るのも才能だよな。私はどうしても絵を描くのが苦手だ」

「愛希先輩、要は慣れです。小生も3ヶ月訓練して何とかお見せできる程度に上達しました故」

「典明は描けるようになったよな。今は少女漫画風だけでなく劇画タッチまでマスターしたし」

「それでも未だに萌え絵は苦手でござる」

 色々言いながら確認終了。


「それじゃ、教務課室へ持って行って終わりね」

 そう、これで本年度の学生会の仕事はほぼ完了。

 厳密には来年度になってからの、この年度分の決算承認があるけれど。

 それも書類は全て作成済み。

 金額も問題無い。


 最後の仕事という訳で、皆で教務課へ持って行く。

 台車1個に段ボール3個載せて。


「お、今年も早いな。じゃあ台車ごとそこへ置いておいてくれ」

 それで完了だ。


 今日は2月25日金曜日。

 授業そのものは今日で終了。

 来週は期末試験で不合格とされた学生の再試験のみ。

 そして学生会に再試験組はいない。

 再試験と卒業生の卒業式以外は3月は基本的にお休み。


「終わったな」 

「そうですね」

「無事で何よりなのです」

 3者3様のコメントだ。


 学生会室の机も、もう中は全て片付いている。

「後はキャンプファイヤーだけなのですよ」

 本当のキャンプファイアーでは無い。

 会計関係の書類等、保管期間が過ぎた書類を燃やす事だ。

 書類の期限が切れるのが4月1日0時なので、だいたい春休み中に実施。

 ゴミ焼却施設へ持ち込んでもいいのだが、面倒なので例年校庭の隅で魔法で一気に燃やしている。

 灰すら出ない程きれいさっぱりと。


「さて、帰るか」

 ルイス先輩の声とともに皆立ち上がる。

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