第98話 最強魔力の魔法とは
盛況だった祭りにも終わりはやってくる。
終了と同時に蛍の光が流れ、緩やかに人が減っていく。
それでも居残ろうとする人々は学園祭実行委員が魔法と実力で排除。
そしてついに学園祭実行委員も会場の惨状はそのままに帰っていく。
今、現役の学生会関係者以外に残っているのはおなじみの2人だ。
「例年以上にこれは酷いな」
「人出も過去最大だったそうです」
そう、修先輩と香緒里先輩。
「それでは社長と大番頭、ここで大魔法を一つお願いするのです」
詩織先輩がわざとらしいもみ手をしながら言う。
修先輩は苦笑。
「まあこれが一番早いし、やるけどさ」
「人を何人も使うより早いし合理的ですしね」
修先輩と香緒里先輩は、詩織先輩から渡されるままに杖を2本ずつ持つ。
4本とも金属製の、例の世界最強杖だ。
「じゃあ香緒里ちゃん、頼む」
「はい」
香緒里先輩が軽く杖を握る。
典明言うところのゼットン1匹級、またはガンダムマークⅡ級の魔力が修先輩に注がれる。
「じゃあ行くぞ。『すべてのものは、あるべきところに』フルパワー版、発動!」
一気に修先輩の魔力が増大する。
それこそ詩織ちゃん先輩以上にとんでもない出力だ。
折りたたみ机やパイプ椅子が飛んでいく。
鍋や簡易キッチンも飛んでいく。
そして何故かゴミが1箇所に纏められ自動的にゴミ袋に入り、外へ飛んでいく。
「何なんですか、これは」
僕の理解を超えた魔法なので、思わず愛希先輩に小声で尋ねてしまう。
「工作魔法の変形って言っていたな。修理魔法の応用で、『全ての物の状態をあるべき姿にする』という概念を掃除や片付けに転用したって聞いた。まあ私には理解できないんだけどさ」
つまりは前にグルクンを下処理したのと同じ魔法の延長線か。
「修先輩と香緒里先輩の魔力は何故かほぼ同一といっていいくらい性質が似ているんです。だから香緒里先輩の魔力を使う事も、それを更に修先輩が増幅することも可能なんです。珍しい例ですけれど」
美雨先輩が補足。
「うーん、ウルトラマンだったらキングかノア、ガンダムだったらストライクフリーダムとインフィニットジャスティスの2機編隊」
典明の判定だとそうなるようだ。
使用魔力が強大で、その癖やっている事が片付けと掃除。
何かもう馬鹿馬鹿しくて笑いたくなる。
5分後。
綺麗に掃除された体育館。
料理がこぼれた痕跡等は一切無い。
外にあった受付・案内席等机やパイプ椅子も全部倉庫に整理されて戻っている。
きっと鍋や調理器具類も全部学生会の工房に戻っているのだろう。
「うーん、やっぱり疲れた」
修先輩がそう言ってリラックスさせるように肩を上下する。
「ほとんど香緒里先輩の魔力の癖に文句を言うでないのです」
「でも疲れるんだよこれ、自分以上の魔力を制御するのって」
香緒里先輩はただ笑っている。
「まあしょうがないので、お礼に家までは送ってあげるのです」
詩織先輩のその言葉とともに2人の姿は消える。
多分詩織先輩の言葉通りマンションに帰ったのだろう。
「それでは学生会も解散。お疲れ様でした!」
「お疲れ様でした!」
との事で僕らも解散になる。
ここからは男子寮も女子寮も同方向だ。
なので寮住まいでない詩織先輩とエイダ先輩を除き、全員で歩いて行く。
「それにしても、世の中って想像以上に不可知に満ちているのね」
ぽつりとそうつぶやく青葉に声には出さないが突っ込みをひとつ。
世の中に満ちあふれているんじゃない。
学生会関係者に満ちあふれているだけだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます