第212話 12月と言えばクリスマス

 さて、冬というか12月。

 学生会も次期役員の話が出てくる。


 実際12月初日から次期学生会役員公募期間。

 しかし

「例年公募するんだけれど、来た事は無いんだ」

とルイス先輩が言うとおり、応募者の気配は無い。


 まあ今年も3年生が3人いるから、3役はそのまま誰かが引き継げばいいだろう。

 仕事は元々全員でやっているようなものだし、問題も特にない。


 そして学生会内ではもう1つの行事に向けて、着々と準備が進んでいた。

 薊野魔法工業株式会社主催、クリスマスパーティのプレゼントの準備である。

 誰に渡して誰から渡されるかはパーティの現場でゲームにより決定されるそうだ。

 現役学生会の部と学生会卒業者の部に別れていて、現役のプレゼントの予算は5000円以内。


 なお『自作の場合は価値観的に制限金額にそぐわないものは作成しない事』と念を押されている。

 これはきっとかつての修先輩対策だろう。


 さて、僕がプレゼントとして出来るものというと何だろう。

 刀シリーズは一応作れるけれどやめておこう。

 学内ですら10万円で売っているものを、材料費5000円以下ですからと出すのは申し訳ない。

 でも購入して面白そうなものというのも考えつかない。

 あと、出来ればプレゼント、交換用の他に愛希先輩用も用意したい。


 うーん、悩むところだ。

 でも悩むと通販で間に合う期限が過ぎてしまう。

 そして通販、何気に高い。

 小物のアクセサリーですら5000円以上が大半。


 よし、諦めて自分で作ろう。

 でもただのアクセサリーだとロビー先輩に当たったりしたら悲惨だ。

 だから実用性も考慮。


 とすると何になるだろう。

 魔法杖方面はもう修先輩が色々作っていそうだ。

 色々悩んだ結果、プレゼント交換用は小型のポケットツールにした。

 小さいナイフにヤスリなど色々付いている奴だ。

 メカその他の完成度を考えてベースは市販品。

 ただ柄の部分とナイフ部分にはちょっと自作を加え拘ってみよう。


 例のオスカー先輩の講義で得たテクニックを最大限に使うつもりだ。

 人工宝石を作って飾るだけではない。

 同じ方法で既存の金属の表面処理や成分付加等も出来る筈だ。


 今回は柄の部分をサファイアかルビーで作成。

 ナイフ等には魔法を通すとより切れ味が良くなるように魔法銀を付加。

 あとはアクセサリーにも見えるように出来る限り薄型に加工予定。

 あくまで大雑把な試案ではあるけれど。


 もうひとつ、愛希先輩用は杖にした。

 僕が今使っているデュオコーンの愛希先輩仕様。


 愛希先輩は僕と違って魔力が高い。

 だからそのままではデュオコーンよりモノセロスの方が有利。

 なので魔力流しはじめはモノセロスとして、ある程度魔力増幅がはじまったらデュオコーンとして動く構造にする。

 更に回路そのものの設計を見直し、僕のものより大魔力適応型にする。


 実はこの杖、ある目的がある。

 目的とは愛希先輩が試みているある魔法をサポートすること。

 そのためにはかなり強大な魔力が必要になる。

 でもそれを実現する方法は魔法ブロックで散々やった。

 今の僕にはわかっている構造だ。


 設計図までは問題無い。

 実作も工房の加工機械を色々使えば出来る筈だ。

 形は出来れば魔法杖らしく見えない事。

 でも大きさはある程度必要だ。

 なら……折りたたみ傘にでも偽装するか。


 そうやって、少しずつ考えをまとめていく。

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