第50話 世に煩悩の種は尽きまじ

「元々学生会の幹部ってのは5人制で、会長、副会長、監査、会計、書記をそれぞれ4年生5人がやる制度だったらしいんだ。

 なり手がいなくて各学年2人とか3人になっているけれどさ。この部屋も本来は1学年5~6人でも大丈夫なようになっているし。

 だから同じ科3人なんて気にしなくても全然OK。まあ同じ科5人だとさすがに6人目からは考えるかもしれないけれどさ」


「というように、昨日ルイス先輩やソフィー先輩からも承諾をいただいています。それに攻撃魔法系の研究会はどうも他の学科の人に優しくない面がありますからね。反省しなければならないと思いますけれど」


「まあそれについては学生会うちのせいってのもあるんだけれどさ。攻撃魔法科でもない風遊美先輩や詩織先輩が模擬戦でガンガン攻撃魔法科の連中をいたぶったから。そのせいで余計に攻撃魔法科の一部の連中が頭にきているってのもあるしね」


 あの救急措置魔法の専門家というおとなしそうな先輩もそんなに強いのか。

 まあ確かにごっそり連れて瞬間移動とかしていたしな。

 さすが怪物だらけの学生会の元学生会長。


「なら入部は、いいんですか」

「当然ですわ。そのつもりで昨日ぎりぎりまでその机を配置したりして用意したのですから」

 何か僕らの目の前では感動のシーンとかをやっているようだ。


 でも僕と、あとおそらくは典明の考えている事はきっと別だ。

 金曜日の悩みがまた増えてしまった。

 しかも今度は先輩方ではない、同級生にして同じクラスだ。

 無論僕ら2人には対処の手段も方法も無い。

 なので余計な想像で頭が怪しくなる前に……


「それでは工房へ行ってきます」

 と2人で学生会室を後にする。


 ◇◇◇


 工房には予想通りロビーさんがいた。

 相変わらずバイクをいじっている。

 しかしあのバイク、一体どんな仕様になっているのだろう。

 既にフレームすら作り替えた事は聞いているが。


「すみません、学生会室の方へ行っていました」

「問題無いデス。ここが不在の時は学生会室に声を掛けるように張り紙も作ったデス」

 との事なのでそれぞれの端末に分かれて作業を開始する。


 だが邪念が邪魔してなかなかに作業が捗らない。

 何せ金井、外見も結構いいしな。

 長めの黒いストレートヘア。

 身長はそこそこ女子の中では高め。

 細くも太くもないけれど胸はけっこうある感じ。

 あ、邪念が色々と……。


 と、ロビー先輩が僕らの方へやってきた。

「そう言えば渡すのを忘れていたデス。ここの鍵デス。これからは自由に使って下さいデス」

 そう言って僕と典明に鍵を渡してくれた。

 市販の合鍵と違い、番号とか上のメーカー名等は入っていない。

 おそらくロビーさんが例の工作魔法でその辺りの鉄板から自製したのだろう。

 でもだからこそ何か特別感がある。


「ありがとうございます。でもいいんですか」

「問題ないデスよ。私も同じように修先輩から4月のうちに鍵を貰ったデスから」

 ああ、あの一見目立たないいかにも工学系風の先輩か。

 でも色々な処で名前が出てくるし、何気にラスボス感もする。

 きっと気のせいだろうけれど。


「ではいただきます」

 明らかに普通の鍵よりずっしりと重い鋼製の鍵を鍵束にセットする。

 何か微妙にやる気が出てきた。


 よし、ではフレーム部分の設計に本腰を入れるか。

 目標は持って歩ける手軽な飛行装置だ。

 まあ実際にはスーツケースのようにコロコロと押したり引いたりして歩くことになると思うけれど。

 さて、やるぞ!

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