第263話 この旅行に足りないもの

 ちなみに前に理奈先輩に聞いた話。

「愛希は基本的には下調べとかをきっちりするタイプだけれどね。食べ物に関してはきっと良い飲食店を探知する魔法を持っているんだと思う。予定外のところに行ってもお腹が空くと自動的に付近で一番美味しそうなお見せを探し出すし」


 うん、あれは魔法に違いない。

 そして青葉も同じ魔法を持っているんだろう。

 そんな訳で昼食に大満足した後、再び車に乗り込む。


「あと2時間ちょっと位はどこかに寄れるけれどどうする?」

「うーん、観光というのとはちょっと違うんだけれど、いいかなあ」

 青葉がちょっと口ごもる。


「何でも大丈夫さ。特に観光に拘ることも無いし」

「じゃあ温泉。そろそろ広い風呂に入りたい」

 青葉、君も大先輩方と同じ温泉教徒だったか。


 しかしこの提案は、

「賛成デス。そろそろ全身伸ばして風呂入りたいデス」

「そうですね。確かにそう思います」

「同意。広いお風呂が恋しいです」

女性2人とロビー先輩の強力な支持を得てしまった。

 というかロビー先輩も温泉教徒だったのか。


 そんな訳で高速を走りながら皆で温泉を検索。

 車内会議の結果、一気に那覇へととんぼ返り。

 17時前に温泉のあるホテルへと辿り着く。


「集合時間は19時ちょうど。遅れたら自分で帰る事!」

 という約束で風呂へ。


 まあ2時間も入る事は無いと思うけどさ。

 そう思って訂正。

 トドは4時間以上風呂に入っている時がある。

 勿論野生のトドでは無い。

 特区某マンション屋上露天風呂に出没するトドの話だ。


 さて。

 確かに広い風呂は気持ちいい。

 借りたマンションは狭いというか普通の風呂しか無かったし。

 そう思うという事は悲しいかな。

 僕も学生会の習慣にどっぷり浸かってしまっている訳だ。

 ただこの風呂は異性のトドが出ないのでそれだけでも気が楽だ。

 当たり前か。


 お湯が筋肉痛に染み渡る。

 昨日の自転車による筋肉痛はまだ治っていない。

 内湯で身体伸ばして一服してから中を観察。


 レイアウトは違うがどこぞの露天風呂と設置施設が似ている気がする。

 熱いサウナとミスト系サウナ。

 ここのミスト系サウナは塩サウナだけれど。

 寝湯もあるし、たる湯の代わりにつぼ湯がある。


 ただここの露天風呂は深いというか高い。

 深さが120センチある。

 通称立ち露天。

 夕日を見るのにちょうどいい高さらしい。


 まだ夕日には少し早いが海が見えて気持ちいい。

 ジェット機が真上近くを飛んでいった。

 那覇空港はすぐそこだしな。


 この塩サウナ、ひょっとしたら保養所にも希望が出るかな。

 でも今女性用になっている区画だと塩サウナではなくアロマサウナなのか。

 香料さえ手に入ればアロマの方が簡単かな。

 塩を処理するのは面倒そうだし。

 立ち露天は作るのは簡単だけれどどうだろう。

 歩行湯がそれくらいの深さあるし必要無いか。


 そんな事を考えていたら見覚えのある姿が目に入った。

 典明だ。


「お、2号車もここに来ていたのか」

「1号車も来ておるぞよ。考えることは同じじゃな」

 確かにそのようだ。

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