第216話 パーティはじまりはじまり

 理奈先輩の服装はどう見てもメイド服という奴だ。

 うん、間違いない。

 それも黒ゴスロリ調。


 しかも髪型、いつものポニーテールでは無く長く伸ばしている。

 まつげもよく見ると加工済み。

 既に色々怪しい。


「朗人なら手が動かせて作業に支障ない格好ですね。面白くは無いけれどこれをお持ちしました」

 既に持っている色でそれがどんな服かはわかる。

 確かにクリスマスな衣装だけれど。


「サンタコスですか、正装って」

「他にトナカイとか黒執事もありますがそちらが宜しいですか?」


 藪をつつくと大蛇が出そうだ。


「サンタでいいです。下さい」

 という事で上下赤に帽子付きの服を上から着る羽目になる。

 サイズがほぼあっているのだけが救いだ。


 向こうで愛希先輩がにやにやしながら見ている。

 愛希先輩の服装もなかなか強烈。

 パステルピンク基調のふんわりふりふり系ドレス。

 というかそんな服、どこで売っているんだ。

 似合っているけれど。


 他はルイス先輩がグレーのスーツ。

 ロビー先輩が緑のズボンに迷彩柄タンクトップ。

 うん、遅ればせながらドレスコードは理解した。

 正装か仮装という事だったんだな。

 どちらも持っていないけれど。


「それでは私も着替えてくるれすよ。ドレスチェックは理奈と愛希に頼むれす」

「私も着替えるのです」

 何に着替えてくるのだろうか。


「それじゃ、とりあえず料理を運んでしまおうぜ」

「その前に、今日はテーブル仕様にした方がいいですわ。椅子も出して」


「任務了解シタデス」

 ロビー先輩、口調も微妙にコスっているのだろうか。

 何か格闘ゲームのキャラクターだよな、あれ。

 僕は元ネタそのものは知らないのだけれど。


 座卓に補助脚取り付けてテーブルにして、更に卓球台もテーブル仕様に変えて、いつもは作業台になっている更衣室のテーブルも持ってくる。

 椅子も積み重ねてあるのを出して並べる。

 こういう備品があるなんて本当に保養所だよな。


 更にテーブルにはこういう時用らしいカバーをつける。

 そして料理の運び込み。

 巨大ブッシュドノエルが1皿。

 七面鳥、フライドチキン、寿司が3皿。

 サラダが5皿でスープが全員分。


 用意する途中でどんどん人が増えてくる。

 男性陣はロビー先輩を除いてスーツ姿とおとなしい。

 女性陣は……色々としか言いようが無い。

 まあ論評は後ということにして。


 全部セットし終わるとちょうど18時。

 パーティ開催時刻になった。

 サンタバニーとしか言い様の無い服装の沙知先輩がマイクを持つ。


「皆様、本日は薊野魔法工業株式会社主催のクリスマスパーティにお越しいただきまして誠に有り難うございます。

 それでは早速ではありますが、まずは現役学生会長でありますルイス先輩から一言ご挨拶をお願い致します……」

 という感じでパーティは始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る