第83話 課題の顛末あれやこれ

 2週間後の7月17日金曜日午後7時、学生会の保養所。

 毎度おなじみ夕食タイムだ。

 今日のメインメニューは中津風チキン唐揚げ。

 他はドイツ風ポテトサラダソーセージ添えとタイ風春雨サラダ(ヤムウンセン)。

 スープが青菜のさっぱり系スープだ。


「でも今年はなかなか豊作だったって、親父も喜んでいたですよ」

 詩織ちゃん先輩はそんな事を言いながら唐揚げを頬張る。

 なお唐揚げは鶏10キロ分を揚げている。

 それでも足りるかどうか今は不安だ。

 何せ既に半分以上が無くなっているし。


「親父も修先輩も売れたとか何だとか色々にやにやしているのです。

 そろそろ何か発表してもいいと思うのです」


「いや、別に秘密にしている訳じゃないさ。ただ成績はあくまで学校側だからね。僕はパテントの売り上げとか材料費をどれくらいに計上するか、田奈先生と話していただけだし。

 まあ来週にもその話はあるんじゃないかな」


「魔法工学科はいいよな。課題でお金が貰えたりするしさ」

 愛希先輩が絡む。

 日常で使えるあの運動能力とか魔法とかの方が珍しいし価値あるんじゃないかな。

 僕はそう思うのだが、まあ確かに何事にもお金は必要だ。


「そう言えば愛希のプロモーションビデオ、既に1万PVを超えたれすよ。既にファンレターも来ているれすがどうれすか?」

 ジェニー先輩が愛希先輩にそう質問。


 僕の飛行機械の説明用に撮ったビデオは色々編集されたあげく、愛希先輩のプロモーションビデオとしか呼べないようなものとなってWebに公開された。

 一応学生会のWeb内コンテンツとして公開されたのだが、既にあちこちに転載され、まあ相変わらずの結果になってしまっている。

 でも確かにあのビデオ、愛希先輩が可愛く格好良く爽やかに映っているんだよな。

 まあ本物も確かに可愛いし格好いいけれど。


「でもさ、名前も知らない奴にいきなり『君は僕のエンジェルです!』なんてメール貰って見ろ、なかなか気持ち悪いぞ」


「でも貰ったファンメールは全部保存してますよね。あと全部印刷してファイルしていましたし」

「理奈!」


「私としては女の子からの熱いメールがあった方が楽しいかな」

「確かあったと思いますわ、ねえ愛希」


「おいこら理奈、色々と……」


「他にも何か変なアイドルプロジェクトの誘いもありましたわね。燃やして解決マジカル愛希ちゃんでしたっけ」


 何か楽しそうでなによりだ。


 ◇◇◇


 そして次の火曜日3・4時限の魔法工学実習。

 僕や典明や金井を含む一部の学生には何か封筒が手渡された。


「今封筒を渡された者は中身を確認し、金曜日のホームルームまでに各担当教官に提出の事」


 そして放課後学生会室でそれを開封してみると……

 中に入っていたのは契約書とか費用の計算書とかそういった書類だった。


 説明によると、今回課題で提出した作品の権利を買ったり実物の購入依頼があった場合の

 ○ 契約書

 ○ 代金確認書

 ○ 契約等に対する担当教官の意見等

が同封されているとの事である。


 ちなみに僕のは日本の某有名スポーツ用品メーカーからのオファーが入っていた。

 記載してある額は、僕の目の間違いで無ければ5年間の学費と生活費を引いておつりがくる程。


 田奈先生の意見によれば契約書の問題は無いそうだ。

 魔技高専等で自作で同種の乗り物を作っても問題は起きない。

 ただスポーツ用と玩具用として市販する品を作る場合の権利のみの譲渡との事。


 なお薊野魔法工業からの費用通知も入っている。

 今回の制作品から収入が生じた場合のみ、収入の5パーセントか使用した部品代金かどちらか安い方を納入して欲しいとの事。

 なおこっちの費用は10万円いかない。

 差し引きの場合の計算書等もついている。


 いいんだろうか修先輩、そして香緒里先輩。

 これでは儲かっていないだろう。

 というかオファーが来た分以外は丸損だよな。

 まあ税金対策だから損をしてもいいって言っていたけれど。


「そっちはどうだ」

 典明が聞いてきたので他から見えないように金額計算の紙を見せ合う。

「残念、朗人に負けたか」


「どれどれ」

 青葉がのぞきに来る。

「うーん、やっぱり台数出せる汎用品仕様は強いわね。私の3倍か」

「でも青葉のは1台あたりだから今後更に増える可能性もあるだろ」

「典明のだってある意味そのまま夢直結じゃない。それでお金がもらえるんだから」


 あ、魔法工学科を除く学生会の皆様がこちらをジト目で見ていらっしゃる。

「やっぱりいいよな、魔法工学科」

「でも愛希の成績じゃ魔法工学科は無理でしょ。攻撃魔法科がやっとで」

 愛希先輩に理奈先輩が突っ込んでいる。


「しょうがないから私達は同人誌で地道に稼ぎましょう」

「そうですね。さしあたっては新人男子2人の薔薇なシーンなんてどうでしょう」

 何かソフィー先輩と沙知先輩の怪しい会話が聞こえた気がする。

 まあ気のせいにしておこう。


「契約書等は親父が法律事務所に確認させたから問題は無いと思うのですよ。これで3人とも確定申告組に入るのです。

 今から親に扶養を切ってもらうように連絡しておいた方がいいのです」


 詩織ちゃん先輩が妙に怖くも実践的なアドバイスをしてくれた。

 経験があるのだろうか。

 あるんだろうな、きっと。

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