第85話 典明の恋愛論
「ん、あれはまだUPしていない筈だけれどな」
典明はあっさりと描いていることを認めた。
今は風呂上がりのまったり時間。
大広間というか宴会場の座卓のところ。
試験も終わったし今日はここ保養所に宿泊予定。
なので典明に漫画について聞いてみたのである。
「何なら今読むか。一応スマホに入っているぞ」
という事で早速典明のスマホからファイルを飛ばして貰って読んでみる。
「色々言うけどさ、内容は単純明快なよくある恋の話だ。遭ってすれ違って別れるだけの話」
うん、確かにそうだねとは思う。
ただ登場人物が40代会社員と中学生の男の娘なだけで。
しかもやっぱり微妙に描写が生々しい。
ふっと気になった指を舐めてみたり、不意に感じた汗の臭いに感じたり。
直接的な行為とかは描いてはいないんだけどさ。
「別に変わった話では無くごくごく普通の話だと拙者は思うのだ。
対象が今回は年の差ある同性だけど、異性なら時折現実世界でもある話だろ」
「まあ、そうだな」
確かにそうではある。
「吾輩は人が人を好きになるのには理由はいらないと思うのだ。
男対女か女対男の組み合わせ以外は今現在は生殖が出来ないだけで、恋愛対象そのものは自由なのではないかなあと思う。実際に付き合うかどうかは別の問題として」
「参考までに男対女と女対男はどう違うんだ」
「どちらが優先的ポジションを取るかであえて分別した」
なるほどな。
あ、まずい。正しい事を言われている気がする。
納得しかけている僕がいる。
「動物的な生殖本能による性的衝動以外で人を好きになるなら、どんな組み合わせだって可能性は否定できないだろう。男対女や女対男以外だって、例えば相手が機械だろうが動物だろうが、何なら形の無い概念なんてものだっていい筈なんだ。
人間の精神そのものはきっと自由だ。縛っているのは生物的本能と意味の無いモラルとか言う因習だけさ。
年齢だってそれと同じ。
実際に法律に規定されている犯罪行為を犯さない限りは自由だと思うんだ。
更に言うとさ、異性の人類同士でしか子孫を作れない事すら過去になるような技術が出来るかもしれないし。
そうすると例えば綺麗な花を見て、『ああ、この花と子孫を残したい』そう思うことがあっても不思議ではないだろう。
そうなった未来から見れば今の社会はまさに理由の無い因習だらけの世界さ。
違うかな」
うんうん、理解した。
僕風情では典明と戦って勝てない事に。
よし、もうこの話題は忘れよう。
あ、でも忘れる前に。
「ちなみに典明自身はどうなんだ?」
「相手次第だな。今はそういう相手がいないし、自分の自由を妨げるような事は言う気は無い」
うん、典明は正しい。
とっても正しい。
議論では勝ち目が無い。
これ以上話し合うと間違いなく僕の常識や良識に被害が出る。
だからもうこの件は忘れよう。
「話は変わるが、あの魔力訓練具はどうなった?」
あ、そう言えば。
課題制作と試験対策ですっかり忘れていたな。
「ちょっと取ってくる。試してみたい」
詩織ちゃん先輩は夏頃には効果が出るかもしれないって言っていたしさ。
夏頃と言っても6月から8月終わりまであるけれど。
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