第86話 魔法使い僕、爆誕!
例の招き猫は定位置、バッグの裏側のポケットにくっつけてある。
触れた瞬間この前と同じように静電気みたいなショックがあった。
まるで最近忘れていた事を怒っているかのように。
「悪い悪い」
とつい言いながらキーホルダーを外す。
ついでにちょっと構えて見る。
例の光線みたいなものが出るのは前と同じ。
でも今、何か妙な感触があったぞ。
気のせいかな。
取り敢えずキーホルダーからぶら下げた状態で典明のところへ戻る。
「何かこの前と違う感触があったんだよな、さっきは」
そう言ってまた構えて見る。
例の光線を出すところまでは前と同じ。
ただ確かに前には感じなかった感触がある。
それが何かはわからないけれど。
「今もその感触を感じるか」
「ああ、それが何かはわからないけれど」
「焦点を動かしてみてくれ。今回は前と違う。拙者でも魔力を感じる」
それは期待してもいいという事なのだろうか。
焦点をゆっくりと座卓の上へと移動させる。
お、また感触が変わったぞ。何か硬い感じだ。
これは……
「ストップ!中止だ!急げ!」
典明のいつにない声。
慌てて僕は座卓上から焦点を外す。
そして招き猫を持ち替える。
「どうしたんだ、一体」
賑やかだった周りも静まりかえっている。
カラオケの曲だけが脳天気に流れている。
今の典明の声が部屋中に響いてしまったようだ。
「あ、すみません。大した事では無いです。ご心配なく」
「そんな感じではなかったのですよ」
それまで付近にいなかった筈の詩織ちゃん先輩が典明の背後から覗き込む。
まあこの人の神出鬼没は魔法で有り属性だから気にしてはいけない。
問題はそれ以外の学生会ほぼ全員がこっちを注目している事だ。
「いや、朗人の魔力訓練を見ていたんです。そうしたら座卓が……」
典明の視線の先、座卓の天板の一部が黒く焦げている。
さっきは例の光の焦点があたっていたから僕からは見えなかったのだが。
「うん、間違いなく魔法、それも炎系統なのです」
あっさりと詩織ちゃん先輩はそう肯定する。
そしてどやどや集まる学生会一同。
OBが露天風呂中なので現役の皆様、つまり学生会室のいつもの皆様に囲まれる。
「お、ついに朗人も魔法使いか」
「てっきり工作系だと思ったけれどね」
「氷系でないのが残念ですわ」
「これで新しい属性とネタが出ましたわ」
何やら色々言われている。
と、詩織ちゃん先輩が僕から招き猫を取り上げた。
「とりあえずここから先はこの魔道具だと危険なのです。微少な魔力でもわかるように増幅率と収束率を上げているので調整が効きにくいのです」
「その訓練具って、一体何だったんですか」
典明が詩織ちゃん先輩に尋ねる。
「ジェニー先輩が魔法を使えるようになった過程から類推して私と修先輩で考えた魔法訓練具なのです。
まあ機能としては、
○ 微量の魔力でも増幅して収束することにより顕現しやすくする機能
○ 魔力電池により常時魔力を蓄積して最寄りの人物へ増幅機構を介して発信し、所有者の身体を魔力に馴染ませ魔法能力を促進する機能
○ 魔力を記録するデータロガー機能
が入っているのです」
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