エピローグ第2話 先輩としての最後のお仕事

 4月1日金曜日午前9時。

 魔技高専の第3グラウンド。

 打ちっぱなし魔法訓練でも使う場所。

 なので派手に炎を上げても文句は来ない。


 学生会の新旧役員が集まっていた。

 何かの爆発跡と思われる穴に持ってきた学生会の廃棄書類を放り込む。

 そして。


「サークルファイア!」

 まず青葉が魔法を唱える。

 炎が穴の周囲をさっと取り巻く。


「カット」

 エイダ先輩の魔法で廃棄書類がバラバラかつ粉々に。


「徹底的お掃除ファイア!」

 愛希先輩の魔法で全てが炎上し、燃え尽きた。

 灰すら残らない。

 ほぼ完全に二酸化炭素や水蒸気に等、気化してしまったのが僕の魔法でもわかる。

 皆の間で拍手が巻き起こった。


「これで本当に僕達は学生会も卒業だな」

「まあどうせ保養所では会うでしょうけれどね」

「週末の飯はよろしくなのです」

と廃棄書類焼却は完了。

 皆で校舎の方へと歩き始める。

 そして校舎の端まで辿り着いた時だ。


「新会長、済みませんがちょっと朗人を借りていいのですか。昼飯調理までには返しますですから」

「別に昼も大丈夫だよ。パン屋も開店したしさ」


「あのパン屋兼洋和菓子屋、朝一番から早くも並んでいたのです。品物が残っているか不安なのですよ」

「それもそうだな。じゃあ私も急ぐか」


 愛希先輩、エイダ先輩、青葉の姿が消える。

 買い出しに行ってしまったようだ。

 理奈先輩がわざとらしく肩をすくめる。


「しょうが無いので副会長権限で朗人を貸してあげますわ」

「ありがとうなのです」

 という訳で僕はここで皆と別れ、詩織先輩と2人に。

 そして詩織先輩は、校舎に入り廊下を魔技大の方へ歩き始める。


「ところで用は何ですか。時間は確かに大丈夫ですけれど」

「ちょっと学生会の先輩として、最後のお仕事を思い出したのですよ」


「何でしょうか」

「学生会に朗人を誘った私がやるべき、多分先輩としてのお仕事なのですよ」

 何だろう。

 全くわからない。


 確かに僕が学生会に入ったのは詩織先輩がきっかけだ。

 そして入った事に後悔はしていない。

 むしろ感謝している位だ。


 詩織先輩は魔法移動を使わずあえて歩いて行く。

 魔技大との渡り廊下を通り、カフェとの分岐を右に折れ大学の魔法工学科棟へ。

 修先輩の研究室の隣の部屋をノックせずに開けて中に入る。


「やあ、待っていたよ」

 女子学生……じゃない。

 見かけはどう見ても女子学生だが声だけちょっと違和感がある。

 そう、オスカー先輩だ。


「ではオスカーちゃん、頼むのですよ。修先輩だとどうも甘くて」

「あいつにはあいつのやり方や考え方ががあるだけさ。それは僕も嫌いじゃ無いよ」

 そしていきなり詩織先輩が消える。

 どうなっているんだ。

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