エピローグ第3話 ゆめのかけら

 オスカー先輩は苦笑する。

「どうせ詩織は何も説明していないと思うけれどさ。まあ気を楽にしてくれ。特に何という事はない。僕が詩織に頼まれたのは単なる説明だけだから。

 魔法杖を持っているよね」


「はい」

 僕はディパックからデュオコーンを出す。

 先輩は微笑んだ。


「もうすっかりその杖も板についているね。性能的にはその杖は完全にチートなんだけどさ。まあ他に使える人はそういないしそれも個性だという事でいいとしよう。

 さて、まずはこっちだ」


 オスカー先輩はそう言って歩き出す。

 研究室の外へ。

 そしてそのまま廊下を魔技大の外れの方へ。


「詩織が気にしていたよ。朗人君には魔力とか魔法の使い方とか刀の制作とかは教えられたけれど、伝え損ねたものがあるって」


「伝え損ねたもの、ですか」

 オスカー先輩は頷く。


「ああ。言葉では説明しにくいものなんだけれどね」

 廊下を第1工場棟と書かれている方へ。

 この辺りは僕は知らない区画だ。


「魔技高専でも研究室が魔技大と共用だとこの辺も使うんだけれどさ。実際はまあ4年になってからかな。前は5年からだったけれどカリキュラムが変わったからね」

 オスカー先輩はそう説明し、3番目の扉を開ける。

 中は完全に工場だ。

 天井もかなり高い。


 目の前に足場を組まれた巨大な機械がある。

 高さは4メートル位だろうか。

 完全に人型の、それも重機という感じの機械だ。


「まずこれ。これが詩織が作っている機械だな。見たとおり人型の汎用機械。これは中に人が乗らないタイプだ。それこそ建築作業や土木作業、何でも使える。嫌な話だけれど戦争にも。それだけの機動性も耐環境性もパワーもある。

 まあどういう機械かは魔法で見ればわかると思うな」


 言われた通り杖を使って見てみる。

 かなり複雑な機械だ。


「こういう複雑な機械を見るときは、まずはいくつかレイヤー分けしてやるんだ。その上で動力源から配線等を追っていけば大体の構造や性能がわかる」


 なるほどな。

 言われたとおりにすると幾分すっきりと全体がわかるようになった。

 前に見たパワードスーツとは明らかに違う汎用性重視の作り。

 魔力を使ってはいるが魔力無しの人間でも使える。


 操作も遠隔で可能。

 それでいて力は下手な重機以上。

 それこそ日常の道路工事とかにも便利だろう。

 しかも用途別に色々な機械をそろえなくて済むし。


「汎用性だけじゃないんだ。これが一般化すれば危険な作業を人間自身が行う必要がなくなる。これは建築土木用のわかりやすい試作機だけれどさ。人間よりやや小型のものまで設計はできているんだ。

 もう人間が直接危険な作業や辛い作業をする必要が無い。これが詩織の夢のひとつだな」


 そう言って先の方へと歩き出す。

 僕は慌てて後に続く。


 さっき入った扉を出て、更に今度は別の建物へ。

 やはり工場だが今度はもっと小さい作り。


 そして入った部屋にあったのは、微妙に見覚えのある車椅子だった。

 前のような完全浮上型ではない。

 四方に脚らしきものがついている。

 デザインももっと洗練された感じだ。

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