第219話 素敵なあなたに贈り物

 一通り笑い終わったところで朱里先輩が動いた。

 こそこそと沙知先輩に耳打ちする。

 沙知先輩は悪そうな笑みを浮かべた。

 そう、沙知先輩はこの悪そうな笑顔がよく似合う。

「さあ、それでは理奈先輩、ルイス先輩にプレゼントを贈呈して下さい」


 理奈先輩はまだひくひく笑いをこらえた感じのまま、女性更衣室へ。

 ルイス先輩は非常に不安そうな顔をしている。

 どうみてもプレゼントを貰おうとする人の表情では無い。

 まあ気持ちはよくわかるけれど。

 理奈先輩はちょっと大きめの紙袋を持ってくる。


「さあ、それをルイス先輩に贈呈して下さい」

 ルイス先輩は不安そうに紙袋を受け取る。

 あまり重い物では無いらしい。


「さあルイス先輩、折角ですので貰ったプレゼントを使用して、皆に披露して下さい!」

 あ、また理奈先輩が死んだ。

 もう笑いがこらえきれなくてうずくまってしまう。

 そしてルイス先輩は袋の中身を取り出す。


 中身は髪の毛……金髪のウィッグ?

 そして白いブラウスと青っぽい衣服。


「理奈、まさかこれ!」

「さあルイス先輩、使用して皆様に披露して下さい。フリーサイズなので上着を脱ぎさえすればあとはそのまま着て大丈夫です!」


 ルイス先輩はとっさに辺りを見回す。

 まわりは邪な期待に満ちた魔女の群れ。

 逃げ場は無い。


 仕方なくルイス先輩は上着を脱ぎ、ネクタイを外す。

 ブラウスは着ないでワイシャツとズボンの上にそのままその服を着て。

 そしてウィッグを装着して。


 もう笑っていないのはルイス先輩本人だけだ。

 その服装とは、水色のメイド服!


「これでいいか」

「ああと、リボンもついてますわ」

 笑いながら理奈先輩が指摘。

 ルイス先輩は仕方なくウィッグにリボンを乗っける。


「これでいいですか、朱里先輩」

 あ、申し訳ないけれど似合っている。

 若干顔が怒っているところがまた悲しいかな似合っている。


「ごめんなさいルイス。私の魔法は未来予知でもくじ運調整でも無いから結果を完全に予想は出来ないの。強いて言えば予定調和ってところまで。

 まさかここまでになるとは思わなかったわ。

 でも……ごめんね、似合っているわ」


「朱里先輩の魔法はくじをある程度左右できるという噂があったんだ。でも本当にあったんだな」

 愛希先輩が笑いながら僕に説明。


 最初に朱里先輩がルイス先輩と美雨先輩の場所を入れ替えた理由。

 この結果の為だったのだろうか。

 素直に美雨先輩に当たっていたら単に可愛いで済んだだろうに。

 酷すぎて……

 ルイス先輩ごめんなさい、でも笑える。


 ルイス先輩、怒った顔のままそれでもリボンをちゃんとつけ直し、ウィッグもしっかり調えてメイド服のまま自分のいたところへと戻る。

 この辺、ルイス先輩も色々わかっていて懐が大きい。


 次々とプレゼントは発表されていく。

 ソフィー先輩は典明作成の『ダイエット用・1日の消費カロリー計算セット』。

 腕時計型の端末とタブレットの組み合わせで、腕にはめると心拍数や血圧等を計測しタブレットに転送、時間毎、1日毎の消費カロリーがわかるという優れ物だ。


「つまりトド防止れすね」

 とこれも良くトドになるジェニー先輩が感想を一言。

 ソフィー先輩本人に馬鹿受けしていた。


 詩織先輩は愛希先輩からなんと『新巻鮭1本』が。

「ごめん詩織先輩、どうしてもこれを見た瞬間、頭から離れなくて」

「大丈夫、朗人に全部無駄なく料理させるので問題無いですよ」

 おいおいおい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る