第223話 世にトドの種は尽きまじ
そして収拾つかない状態のまま。
事態は延長戦に突入した。
なお学生会OBのプレゼント交換は深夜の部に変更したそうである。
深夜の部とは隣の部屋のリビングで酒有りでやる2次会の事だそうだ。
なお僕は何故かというか、当然の結果ながら新巻鮭の解体等という事をしている。
半生で食べたいところは取り合ず瞬間冷凍。
今日試食したいところだけを出してあとは冷蔵。
塩加減がわからないのでまずは水煮とカマ焼き。
ついでに御飯も試食用に炊いて。
準備していたサンドイッチも仕上げて出してと。
その結果。
うん、これは塩甘めだな。
このまま焼いてもちょっと塩辛いけれど大丈夫だろう。
そんな事を僕が思う頃にはトドが出始めている。
何せ鮭と御飯で何杯も食べている奴がいるのだ。
1人では無い。
集団だ。
「御飯と鮭おかわり」
「これ以上切ると年末分無くなりますよ」
「大丈夫、買ってくるからさ」
確かに塩鮭と御飯は凄く合う。
日本人の遺伝子に染みついているのではないかと思う位に。
でもこいつらは食べ過ぎだ。
間違いない。
味見の段階を越えている。
「鮭の持ち主の詩織先輩、いいんですか作っても」
「文句を言わずさっさと作るのです」
所有者の意向了解。
そんな訳で、5キロ程度あった鮭は哀れほぼ全滅。
まあ骨部分はあとで肉をかき取ってフレークを作る予定。
頭は氷頭なます用にとってあるのだけれど。
そして追加サンドイッチも全滅。
愛希先輩がプレゼントで貰ったルイス先輩のクッキーとかのセットに至っては、僕は中身すら見る隙が無かった。
空いた箱と瓶だけがかつての存在を示すのみ。
そして食べ過ぎに気づいた時点で。
人はトド化する。
そして舞台は露天風呂へと持ち越された。
今日は露天風呂もOB現役関係無しだ。
まあトドが多いので待っていられないせいもあるけれど。
「それにしてもプレゼントの5,000円以下って、もう有名無実よね」
「一番値段が近いのがルイスのアフタヌーンティっぽいセットだけれどさ、あれも現地価格で送料無視だろ。ソフィーのカードケースもカナダから知り合い価格で買ったいい革使っているようだしさ」
「人工宝石シリーズは取り敢えず全部アウトよね」
「理奈さんのメイドセットも間違いなくお友達価格でしょう」
OBの皆様から現役のプレゼント交換に対する厳しいコメント。
ちなみに皆さんトド化が激しい。
例によって全体の3分の1はトドの湯漬け状態。
動けないのでその分口が弾む訳だ。
「まあ材料費が5,000円以下だからいいんじゃないかな」
「修兄がそもそもの原因のような気がします。前の『オメガ・シーマスター新品同様完全稼働、杖の機能付き、不動ジャンク品を買ったから元値は確かに5,000円以下』って、どう考えてもルール違反ですよね」
「あれは便利に愛用中ですわ。男物ですけれど見やすいですし、杖機能は裏蓋に面実装で入っているから誰にも気づかれませんから。ただ冗談で買い取り価格の査定をしたら20万を超えましたけれど。店ではきっと倍の値段で売るのでしょうね」
「大丈夫、今年のは中古屋に売れるものじゃないから」
「間違いなく危険物扱いな魔道具ですよね、きっと」
修先輩の返事は無い。
そんな感じでぐたぐたに夜は更けてゆく。
翌早朝、愛希先輩は詩織先輩と杖の試験を兼ねて北海道へ買い出しへ。
絶対これ5,000円じゃないなというでっかい鮭を2本購入し、さらに余計な海産物まで多数購入して保養所へ帰着。
朝から僕が全力で料理する羽目になり、結果またしてもトドが発生する状態になってしまった。
はあ。
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