第123話 函館山までのんびりと
この移動を市電にした理由。
乗って外を見ていると何となくわかる。
夜の街並みがいい感じだ。
何という事は無い街なのだろう。
でも知らない街の景色は何か楽しい。
旅館街から普通の住宅街、そして繁華街と移りゆく車窓がいい感じだ。
駅付近を過ぎて再び住宅街に戻ったところで市電を下車。
僕ら以外に降りたのは男性2人程。
その2人を含めて同じ方向へと歩いて行く。
前で由香里先輩達と男性2人組が話しているのが聞こえる。
彼らは電車で北海道旅行中、本日は函館駅で野宿だそうだ。
色々出来るだけ節約して、その分北海道の鉄道を乗りまくろうとしているとの事。
なお2人は一緒に旅行中ではなく、それぞれ別々に旅行していてたまたま今一緒になったとの事。
「ああいう旅行もいいよな。学生らしくて」
「でも愛希先輩は駅ビバはやめて下さいね。何か危険な感じがするんで」
愛希先輩も詩織先輩ほどじゃないけれどロリ系に好かれそうだしな。
「別に私が危ないという事はないけどな。いざとなれば魔法一発」
「相手が危険なんです。自覚して下さい」
そんな話しているうちにロープウェイの山麓駅。
ここは結構人がいる。
観光バス等で来る人も多いらしい。
今の時間だと帰る人も結構多いかな。
そしてロープウェイに乗る前に沙知先輩から全員にお知らせ。
「帰りは何時に帰ろうとどう帰ろうと自由です。二十歳以上はお酒もOK朝帰り有り、お持ち帰りだけは無しです。かかった費用はバス代と電車代以外はレシートか領収書を取って下さい。よほどとんでもない代金でなければ修先輩がバスの中で精算します」
おいおい、凄い事を言っているな。
「ならもし私が他の旅行者と高い寿司屋に入って、10万円払った場合はどう?」
「10万円超えはやめて下さい」
修先輩が苦笑いをしつつ答える。
「よし、9万9千円までで妥協するわ」
おいおい。
お互い冗談ではなさそうなところが怖い。
ロープウェイは下りは混んでいたが上りはそれほどでもない。
「ピークは日没前みたいだな。日没前にのぼって日没から暗くなるのを見て、暗くなったら帰る。そんな感じかな」
駅の案内等を見て愛希先輩が言う。
確かにそんな感じだ。
でも空いていていい事もある。
ロープウェイの車内自由に動ける事だ。
そしてやっぱり下側の視界が一番楽しい。
夜なのに街の明かりで陸地の形がはっきりわかるのだ。
両脇を海で挟まれているところまで。
「来年は明るいうちに見てみたいな」
来年もここに来る事決定か。
まあそれもいいかもな。
そんな事を思いながら夜景がが徐々に開けていくのをゆっくり楽しむ。
山頂へは気分的にはあっという間だった。
そして確かに夜景は圧巻だ。
「せっかくだから一番上で見ようぜ」
と愛希先輩が仰るので階段で一番上へ。
ちなみに僕と愛希先輩の体力はかなり差がある。
まあそれでも遅れずに何とか一番上へ。
風がなかなか気持ちいい。
そして。
「やっぱりいいな」
愛希先輩が言うように確かに夜景が綺麗だ。
地形と道路に沿って光の列が並んでいる。
白っぽい光とかオレンジ色っぽい光とか。
よく見ればホテルの場所も何となくわかるような気がする。
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