第172話 学祭の華は模擬店です
10月23日土曜日の午前11時。
つまり10月30日からはじまる学園祭の一週間前。
僕は久しぶりに工作作業をやっていた。
作っているのは移動式の屋台。
まあ実際は模擬店として固定して使うのだけれども。
テイクアウト用の揚げ物を作り、販売する予定だ。
これは各科1年生有志の企画である。
元々は1年生の留学生会主催の出し物だった。
ただ留学生だけでは人数が集まらなかったらしい。
それで各科の日本人も含めて有志という形で企画したそうだ。
僕は学生会があるからと逃げた筈だった。
でも全ての企画が決まった後にもう一度引き戻された。
諸悪の根源はわかっている。
青葉と典明だ。
「うーん、料理物なら三輪に任せておけばお膳立てしてくれるんじゃないの」
「学生会でもやっているよな。魚祭りも今年は三輪が仕切っていたし」
等と無責任な事を言って、そのくせ本人達は参加しなかったのである。
ついでに言うとこの企画参加者21名のうち男子は僕を含めて4人。
そして日本人は僕の他に同じクラスの大蔵朝海と能ヶ谷、攻撃魔法科の女子3人、補助魔法科の女子2人の8人。
圧倒的に留学生女子が多いのだ。
能ヶ谷がいてくれて大変助かった。
奴はフットワーク軽いし色々気が利くし。
何せ僕が無理矢理スカウトされた時点では具体案は何も決まっていないも同然。
キーワードは屋台と揚げ物だけだったのだ。
「いや、学園祭は去年も見たんだけれどカレーとか焼きそば以外に腹にたまる系が無くてさ。歩きながら食べられて腹の足しになるのがあれば売れるかなと思って」
「色々メニューを考えたです。でも交代制で誰でも作れて腹の足しになるもの、他にアイデア出ませんでしたです」
「イメージは東南アジアの屋台。揚げてソース選んで食べる奴」
そんな色々なイメージをまとめるところからまずはじまった。
買い出しの難易度や値段も考慮して、メニューを
・鶏肉 ・イカ ・きのこ ・料理用バナナ ・ししゃも
・ヤングコーン ・かにかま
にまとめるのにも結構時間がかかった。
本当はもっと品目を少なくしたかったのだけれどやむを得ない。
それぞれ支持者が多くて絞れなかったのだ。
なお料理用バナナは魔法工学科A組のホアンマンが実家から送って貰うとの事。
ソースも甘辛酸っぱいのからケチャップ、更に甘い系まで。
なお今回は市販ソースを使う予定だ。
味にばらつきがあると困るし。
傷んだらもっと困るから。
幸い魚祭りのおかげで注文等の流れは把握できている。
なので1日の目標売り上げを土日が5万円、平日が2万円として材料も注文。
そして今日は学生会を抜け出してこっちの作業をやっている訳だ。
ちなみに今作っている屋台、結構大きい。
しかも無駄に高性能。
冷凍冷蔵ケースとフライヤーと陳列及びソース配置スペースがついている。
勿論紙皿や串、割り箸のストック部分も完備。
なお冷凍冷蔵庫とフライヤーは手抜き魔法仕様だ。
寒冷系魔法使いと炎熱系魔法使いが随時蓄熱用の石や金属に魔法をかける。
冷凍庫はマイナス18度、冷蔵庫は3度、フライヤーは185度設定だ。
5分に1回魔法をかければほぼ大丈夫な筈。
そして屋台そのものも電動で動く。
バッテリーを使ってもいいし魔力を使って発電してもいい。
無駄に色々凝った作りだ。
材料費は廃品や学校のストック等を色々流用しているから事実上無料だけれども。
なおホアンマンと魔法工学科A組のデイビッドが工作魔法を使えるので作業の中心はこの2人。
作業現場は学生会の工房。
学園祭期間中はここを使う用事が無いので詩織先輩にお願いして借りている。
工作以外にも巨大冷凍冷蔵庫とかあるし、拠点として大変使いやすい。
なお使用料は、『余り物でいいから美味しい物よこせ』である。
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