第31話 他人の料理も美味しいな
朝食はつけ麺だった。
正確にはつけ麺というよりぶっかけ麺だろうか。
大量の麺が盛ってあり、カウンターに野菜炒めや肉やハムや卵焼きといったトッピング、ごま味と醤油味のスープ2種が用意されている。
各自好みに応じて盛り付けてスープを掛ける、そういうシステムだ。
「いいですねこういうのも」
「朝は麺類が多いんだ。宗教上の兼ね合いでさ」
愛希先輩がそう説明してくれるが気になる単語が一つ。
何だその宗教上ってのは?
取り敢えずそのまま盛り付け終了したラーメンどんぶりと箸を持って座卓の方へ移動。
ちょうど空いていた愛希先輩の横に陣取る。
「何ですかその宗教上の理由って」
「この中にスパモン教の信者が3人いてさ。スパモン神の教えの元に麺類を食べるんだと」
何だその聞くからに怪しい宗教は。
でもここの人間には常識らしい。
後でぐぐって調べよう。
「それでは新人もいるから軽く説明をする」
ルイス先輩がほぼ全員揃ったのを見て声を掛ける。
「麺もおかずもおかわり自由だ。おかずが足りなければ適当に冷蔵庫の中の物を使ってくれ。麺が足りなければ生麺が冷蔵庫に入っているからそれをゆでて、生麺が足りなければ修先輩に頼んで作って貰ってくれ。
それでは、いただきます」
全員でいただきますを復唱して食べ始める。
僕のは野菜とハムを少々入れた醤油スープ。
うん、なかなかさっぱりとして美味しい。
というかこのハム異常に美味しい。
少なくとも前に買っていたスーパーで3パック198円のロースハムよりは絶対に美味しい。
一見普通のピンク色のハムなのだが、注意深く食べると色々香草の香りが奥に感じられる。
「このハム、どこのハムですか?」
「買い出しは風遊美先輩か詩織先輩だからな。確かに美味しいけれどちょっと私はわからない」
愛希先輩はわからないか。
と思ったら
「それはフランスで直接買い付けてきているのですよ。本場のジャンボン・ド・パリなのです」
いきなり後ろで声がした。
でもこのパターンには僕も慣れてきた。
振り返るとやっぱり詩織先輩。
座って丼を抱えて麺をすすっている。
「フランスで買い付けって」
「月に2~3回用事があって行くのですよ。その時にハムとチーズは買いだしてくるのです」
そんな気軽に、と思って気づく。
この人にとっては気軽なんだろう、きっと。
世界中どこにも飛べるって言っていたし。
「フランスには学生会の先輩がいてよく出かけるんだ。パリじゃ無いけどな」
「ノルマンディー地方のルーアンという街なのですよ。奈津希先輩にルイスと稽古付けてもらいに行くのです」
そういう訳か。
納得出来ないけれど了解した。
「このハムは奈津希先輩のお勧めの一品なのですよ。日本で買うより遙かに安いので行く度に買い付けてくるのです」
「確かにこれは美味しいです。後で見せて貰っていいですか」
「冷蔵庫に入っているので試食も含めて遠慮無くどうぞなのです。費用はいらないのです」
そう言えば夕食代も含めて払っていないな。
「そう言えば朝食代とか夕食代とか、ここの維持費とかは大丈夫なんですか」
「後で身体で払って貰うので問題ないのです」
何だって!
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