第103話 大分混浴にも慣れました

 その後、

「重複があるから以上との事よ。小樽は行った初日に回れるから除外して。そして札幌フリーの日も作るから。残りは1人3票で投票ね。同じ場所に3票入れてもいいわよ。決まったら番号を言って。重なっても小人君が全部聞き取って、票数をカウントしてくれるから大丈夫よ」


 美南先輩がそう言うと同時にあちこちから番号を言い合う声が聞こえ始める。

 人間ではとても判別できない位重なっていたりするのだが、黒い小人は忠実かつ確実に数をカウントしていく。


 結果、

   ④ 利尻島か礼文島でウニ丼 24票

   ⑧ 釧路和商市場で勝手丼  22票

   ⑤ 稚内でタラバガニ 18票

となったのだが、


「よく考えると8月はタラバガニのシーズンでは無いですね」

という意見により次点繰り上げで

   ⑥ 根室付近で花咲ガニ 17票

がベスト3入りをした。


「ではこの意見を参考に実行委員会がプランを組むわ。楽しみにしていてね」

 という話でまとまる。

 というか利尻礼文と釧路と稚内で1日か。

 北海道人が怒るだろう、距離感が間違っているって。

 まあ間違いなく詩織先輩の魔法頼りだ。


 例によって蒸し肉計10キロがきれいに消えたところで食事終了。

 片付けて露天風呂の時間だ。


 ◇◇◇


「朗人、魔法の方はどうだ」

 いつもの露天風呂。

 隣のあつ湯にいる愛希先輩がそんな事を聞いてくる。


「まだまだですね。杖を使えば蒸し物位は作れるようになりましたが、杖なしだとまだまだ」

 今日の蒸し豚は実は僕の魔法による調理である。

 他は素直に蒸籠を使ったけれども、まあ試しとしてだ。


「でも大分進歩してるじゃ無いか。私も追い越される前に頑張らないとな」

「それでももう冷却も使えるじゃないですか」

「まだ理奈に比べると冗談みたいなレベルだしさ。それにルイス先輩は他に風、土、雷まで使えるし」


 愛希先輩は言葉遣いは男っぽいが、実際は真面目で努力型らしい。

 前に理奈先輩がそんな事を言っていた。

 そして僕が魔法工学科系を除くと一番話しやすい先輩でもある。

 なんやかんやで親切だし考え方もいわゆる一般的な常識に近いし。


 これが理奈先輩や沙知先輩だと常識や良識より面白さ重視になる。

 ソフィー先輩はその中間かな。

 そして詩織先輩は考え方や能力が色々人間じゃない。

 なお美雨先輩は口数が少ないのでまだ把握出来ず。

 それに比べれば男性陣はそういうアクというか毒はあまり無い。

 苦労性のルイス先輩と何も考えないロビー先輩との差が激しいけれども。


「そう言えば愛希先輩は魔法の訓練ってどうやっていますか」

「中学時代の先生に教わったのは、とにかく魔法の発動過程を何度も繰り返す事だな。攻撃魔法なんて要は先手を取った方が絶対有利だ。だから発動過程を何度も練習してイメージを固めて、発動時間を少しでも早くなるよう訓練するんだと。そうすれば結果的に魔法の精度も上がるしな。

 あとは1日の最後に魔法をギリギリまで使い切る。そうすれば結果的に魔力の蓄積と放出が多くなって結果的に魔力が上がるんだと。どっちもまあ、基本的な事だけどな」

 なるほどな、勉強になる。


「後は信頼できる確実な技を磨くことか。一発逆転の大魔法なんてのより信頼できる小技をいくつも持っていた方が実際は有効だ。まあどれも攻撃魔法科の発想だから魔法工学的にはまた少し違うかもしれないけれどさ」

「いえ、参考になります」

これからは週に2~3回でもいいからそういう練習を心がけよう。


「さて、そろそろかな」

 愛希先輩のその言葉とともに樽湯の方から何かが飛び込んだような水音が上がる。

 毎度お馴染みルイス先輩と詩織先輩のやりとりがはじまった。

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