第61話 とっても便利な魔法使い
幸い露天風呂にトドは残っていなかった。
魚を運びながら一安心。
例によって大物の解体は美雨先輩に任せ、僕はグルクンのバケツを片手にキッチンへと向かう。
まずは下拵えだ。
この魚の場合はうろこを取って内臓捕ってえらも抜いて……
結構面倒くさいが、まあこの後の料理の為だ!
そう思った処で詩織ちゃん先輩がやってくる。
「どうなのですか。どれ位で出来るですか」
気が早すぎる。
「下拵えが一番時間がかかりますね、この数ですから。1匹1匹は簡単なんですけれど」
詩織ちゃん先輩はにやりと笑った。
何か心当たりがあるようだ。
「それならちょうどいい魔法の使い手がいるのです。1匹だけ完璧な仕上げで下拵え済みの魚を作るのです。そうすれば後は魔法で出来るのです」
そんな便利な魔法があるのだろうか。
そう思いつつも言われたとおり、うろこを取って内臓を取ってえらも取って、ついでに背中から半分ほど身に包丁入れてと仕上げた状態のものを1匹作る。
と、詩織ちゃんが修先輩を連れてやってきた。
修先輩は例の金属製最強杖を持っている。
「という訳で何かと便利な魔法使いを連れてきたのですよ」
完全に修先輩、道具扱いだ。
高専卒業のOBにして大学3年生なのに。
「修先輩すみません。何かいきなりで」
「あ、どうせ部屋にいたし問題無いよ。その包丁が入ったのと同じように処理すればいいんだね」
修先輩はそう言うと杖を軽く上げる。
お、いきなりバケツ内の魚が動き出したぞ。
冗談みたいな速さでうろこが取れて内臓が抜かれえらも取られて切れ目も入る、
わずか数十秒で魚は全部処理済み。
しかもうろこや内臓等は全部流しのゴミ入れに入っている。
「どういう魔法なんですか、これは」
便利すぎて訳がわからない。
「本来は工作魔法の一種だよ。同じ物を加工して複製する魔法。
それを少し進化させて『ほぼ同じ物を見本品と同じように制作者の意図に沿って加工して処理する魔法』になっている。だからゴミはゴミとして分別するし包丁の入れ方と同じように切れ目をつくるし」
何か家内制手工業に便利そうな魔法だ。
実際に会社でも使っているのかもしれないな。
「という訳で朗人はさっさと唐揚げを作るのです。それにまもなく美雨の魚解体作業も終了するのです。ご飯は事前にロビーが炊いているのでいつでもOKなのです」
そうか、なら急がないとな。
「修先輩、ありがとうございました」
「いやいや、料理毎回ありがとう」
修先輩は去って行く。
さあ、揚げ物と刺し身とあと汁物か。
30分で行けるかな。
油を深い中華鍋にドボドボ放り込み、コンロにかけてその間に魚に軽く塩を振り、小麦粉を入れたスーパーの袋にグルクンを入れてフリフリして粉を付け……
◇◇◇
「
ちなみに何故かパクチーを刻んだ皿もある。
はまりやすい誰かさん達がリクエストしたのだ。
パパイヤのサラダもある。
やはりはまりやすい誰かさん達のリクエストだ。
詩織ちゃん先輩にまた色々買い出しをお願いしないとな。
後でリクエストを色々紙に書いておこう。
「いただきます」
の唱和で昼ご飯はスタートする。
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