第95話 下拵え中に一服中
「とりあえず朗人、これからの作業はどうなのですか」
捌いた魚の一部を刺身にして工房前で皆で食べる。
なおご飯は炊飯器ごと詩織先輩が保養所から持ってきた。
無論魔法でである。
食器類は工房や学生会室にあるのを使った。
色々とまあ装備が揃っているものだ。
「ブリ大根とあら汁とスープ、あと各種のタレをつくるのがメインですね。
兜焼き用のマグロの頭も一応火を通してから保存しようかと思います。
だから作業そのものは片付け除いてあと2時間程度かと」
「愛希も理奈も魔力の残量はまだ大丈夫なのですね。ロビーの魔力がそろそろ残り少ないのですが、代わりに修先輩を呼ぶので大丈夫なのです」
修先輩は現在大学3年生で魔技高専の卒業生。
そしてあのバネ会社の大番頭にして黒幕。
僕からすれば大先輩だが、詩織先輩にとっては気軽に呼べる程度の扱いらしい。
「しかしメニューがかなり増えたのに時間はそんなに変わらないんだな」
「これは朗人のおかげなのですよ」
「僕というか、実際に苦労したのは愛希先輩と理奈先輩、それとロビー先輩です。申し訳ない位に動いて貰って」
3年生3人のそれぞれの魔法、こういう大規模料理には強烈に便利なのだ。
だからついついこき使ってしまった訳で……色々申し訳ない。
「確かに朗人は料理に関して凄いよな。ある種巨大魚を前に包丁を持った時の美雨と同じ凄みを感じる」
「私のは単なる魔法ですから。肉や皮、骨の場所と分け目を視る事が出来て分けられるというだけの。朗人君は魔法なしであれですから」
美雨先輩のあの魚捌きはやっぱり魔法だったのか。
きっと本当は外科手術とかそういう用途の魔法だよな。
でもまあそれならあの魚捌きの腕は納得だ。
「でも済みません、本当に人の魔法を当てにして色々やってもらって」
「問題ないさ。それに色々出来ていくのは結構楽しいし」
「そうですね。料理の手順も参考になります」
「最終的に美味しい物が出来れば問題無いデス」
そう言っていただけると大変精神的に助かる。
「私も炎の応用魔法を覚えようかな。あの掃除用炎魔法、便利だよね」
「あれのオリジナルは奈津希先輩だけどさ、慣れれば割と簡単だぞ」
「拙者ももう少し魔力と発動速度を上げる必要があるな。飛んでくる大根を分別する速度とパワーはまだ小生には無い」
「あれは速度は関係ないデス。分別する
そんな魔法談義もしながら昼食を食べる。
刺身がもう強烈に新鮮で死後硬直すらまだ完全で無い状態。
未体験領域の味だ。
少し味があっさりしているがこれもまた強烈に美味しい。
ただ今は保養所では無いのでおかわりに限界がある。
おかげでトドは発生してしない。
◇◇◇
午後も約2時間目一杯動いて、ひととおり準備が完成した。
○ 刺身用の魚のサク 各種そろえて 約300キロ
○ 揚げ物用の魚のサク及び端切れ 約100キロ
○ 焼き物用の魚のサク 約50キロ
○ 当日魔法で熱して焦げ目をつける兜焼き 20個
○ 味噌仕立ての魚汁 約250キロ
○ タイ風魚のスープ(トムヤムプラ-)約100キロ
○ ぶり大根 約200キロ
○ ぶり兜煮用の別鍋 約30キロ
○ 大根菜の漬物 約10キロ
○ フライ用ソース3種類
(中華あんかけ、タルタルソース、バルサミコ風味ドレッシング)
○ 魚の漬け用のたれ
○ カルパッチョ風味用ドレッシング
○ 照り焼き用のたれ
なお汁2種の中に入っていた骨部分は全て除去してある。
修先輩の便利で意味不明な工作魔法で骨やウロコ等硬い物を全て除去したのだ。
更に各々はルイス先輩と理奈先輩によりきっちり1度まで冷やした後、香緒里先輩により容器全部に氷温維持の魔法をかけてもらう。
とどめに詩織先輩が怪しげな時空間操作魔法を追加。
魔法の効果は熟成及び腐敗速度の半減だそうだ。
あとは当日。
仲間内用の味見用各種とか各種内臓珍味類をお土産に帰途につく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます