第196話 追加メニューと新魔法杖

 翌朝。

 屋台の方では僕にちょっとしたペナルティがついていた。

「とあるルートで手に入れたんだ。高速魔法調理で出来る料理一覧のメモ」

 能ヶ谷がそう言ってにやにやしながらコピーを僕に見せる。


 焼き飯とかパエリアとかチーズオムライスとかイラスト入りで描いてあった。

 イラストのタッチから犯人はばればれ。

 ソフィー先輩、もう隠そうともしていない模様だ。


「そんな訳で今日は目玉焼きのせ焼飯は海鮮味で、チーズオムレツチキンライスバージョンを頼む」

 昨日サボったので断りにくい。

 なのでまあ、仕方なく実演から開始。


 そしてオムレツバージョンには更にサービスが。

 注文ごとに店員がケチャップでハート型等を描いてくれるというサービスだ。

 確かにこの屋台、留学生中心にきれいどころが結構いる。

 でもそれ、何かあざとくないか。


 今日は祝日なので朝から人出が多い。

 空は抜けるような青空。

 なので売れ行きは悲しい位に絶好調。

 10時の学生会おやつタイムに行く余裕も無い。


 焼飯も売れているが目立つのはオムライスの方。

 ケチャップ担当もノリノリで、

「萌え萌えキュン!」

とか言いながらハートとか星形とか描いている。

 それは違う店だろう!

 そう突っ込むのは野暮なのだろうか。


 今回は卵載せ部分があるから僕も一度作ったら終わりという訳にはいかない。

 まあ御飯側に溶けるチーズを敷いて多少の破れはばれないようにしてはいる。

 それでも破れてしまうと悲しいしみっともない。

 だから結局卵載せ部分は僕の担当。


 女性陣から渡された整形済みチキンライスの上にチーズを敷き、卵液を載せつつ焼いて萌え萌え担当へ。

 そんなこんなで流れ作業的に卵載せ作業を終わったら今度は御飯の方の魔法調理。


 いつもなら魔力が切れるところだが、今日は残念な事に新兵器がある。

 修先輩謹製の僕専用魔法杖、デュオコーン。

 例の爆発事故を起こした魔法ブロックの組み合わせを元にした最新版の杖。

 昨日の実験の合間に作って貰った代物だ。

 この杖がまたいい具合に強力すぎる。

 おかげで魔力切れを理由に休む事も出来ない。

 補助魔法科の女子が僕の魔力残量をチェックしているし。


 何この強制労働、酷くないか。

 そう思いつつも他の皆様が楽しそうに屋台商売しているので怒る事も出来ない。


「朗人なら単独で自衛隊の野外炊飯セットに勝てそうだな」

 能ヶ谷がそんな軽口を叩く。

 そんな戦いする気も無いししたくない。


 結局9時半から働きづめで、12時ちょうどに最後の魔法調理実演をして。

 その分のオムライスを作ったところでやっと解放して貰った。


「次は15時半に出前の大量注文あるから魔力を溜めとけよ」

 能ヶ谷から有り難いお言葉。

 うん、きっと今日だけで魔法調理レベルがいちだんと上昇するな。


 撤退する前に昨日詩織先輩に約束した揚げバナナを20個購入。

 半分は粉糖、半分はメイプルシロップをかけて学生会室へ。


 詩織先輩、愛希先輩、理奈先輩、沙知先輩、エイダ先輩、青葉という面子が何やらやっている。


「今日はどうしたんですか、この人数」

 昼は特に集合する事は無いんだけれどな。

 いつもはだいたい担当1人で御飯を食べている感じだし。


「今日午後のパーティに備えて打ち合わせなのですよ」

 そう言えばそんなのがあったな。

『グレムリンズ公演、水曜午後のおやつ劇場』だっけか。


「今年はお客様が50名程いるので本気モードですわ。部屋も大学の大実習室を1つ借りましたし」

「会場整備は大学の方の先輩達がやってくれるからさ。司会と魔法の実演なんかの打ち合わせ中」


「ところで揚げた甘い香りがするのですよ」

 詩織先輩が僕の持ってきた揚げバナナの存在を嗅ぎつけ、一時休憩となる。

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