第163話 ようやくやっとのご挨拶
さて、気分はデート気分。
というかデートだよなこれ、間違いなく。
特区は狭すぎてデートに適した場所なんてほとんど無い。
映画館もなければ洒落たショッピングセンターも無い。
せいぜい飛行場の神社とホテルのラウンジ、あとは南浜くらいだろう。
ラブホは無いし寮は入口に寮務教官がいる。
外で致すような場所は無いし魔法で感知されるし。
ちなみに大学の寮は出入り自由。
噂では大分酷い事になっているらしい。
通常の大学と違って特区は女性余りまくり。
だから女性同士のカップルも多いそうだ。
学生会担当の筑紫野先生のところもそうだよな。
あそこはまさに魔技大時代からのカップルらしい。
あ、妙な事まで考えてしまった。
いかんいかん。
「こうやって2人でいるのも沙知にモニターされていたりしてな」
あ、愛希先輩も色々考えていたみたいだ。
「沙知先輩のモニター範囲は相当広いらしいですしね。それこそ詩織先輩並に移動しないと脱出は無理でしょう」
「だな。そんな訳でもし私と付き合っても当分は健全なお付き合いになってしまう。
そんな訳だけど……ん、なかなか言いにくいな、色々」
微妙に口ごもっている。
これはひょっとして。
こういう場合はこっちから言うのが礼儀だよな。
出来るだけさらっと。
「僕は愛希先輩が好きですよ」
あくまでもさらっと何気ない感じで。
でも言ってしまった。
横目でちらっと愛希先輩の方を見る。
ちゃんと見るのが気恥ずかしくて。
あ、愛希先輩、むくれている。
何か失敗したかな、僕。
「うーん、先輩だし私から先に言おうとしたんだけどな」
あ、その程度か。
なら一安心。
間違っても嫌われてはいないとは思っていたけどさ。
出雲大社での件もあるし。
「でもいいのか私で。2歳上だしがさつだし、正直身体も理奈あたりと比べると魅力的じゃ無いぞ」
あ、ここで思わずボケたい気もする。
大阪府出身の母方の血が微妙に騒いでいる。
ここは『僕はロリコンだからツルペタが好きなんだー!』と叫べ!とか。
もしくは『どれどれ』と言いつつ背後に回って手を胸に回し確認するとか。
そのあげく『やっぱり胸、無いね』と言って、後は先程とおなじロリコン路線に行くとか。
うん、どっちも真性の変態だな。
無難路線で行こう。
しくじったら元も子もない。
「もう一度言いますけれど、僕は愛希先輩が好きなんです。今の愛希先輩が」
あ、僕も今の台詞で限界だ。
絶対顔が赤くなっている。
ただ愛希先輩の方も気配からするとちょっと限界らしい。
なのでちょっとクールダウン時間を置く。
そして。
「うん、ちょうどいいからけじめとしてやってみたけれど、やっぱり恥ずかしいな、これ」
「確かにそうですね」
まだ僕は結構ダメージが残っている。
恐らく愛希先輩も。
「まあ何はともあれ、これからも宜しくな」
「こちらこそ」
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