第198話 やっぱりここが出前先
微妙になにか引っかかる。
会場は大学1階のの大実習室A。
これはまさか、ひょっとして……
「能ヶ谷、この注文主は何処なんだ」
「魔技大魔法工学科新地研究室、三田彩音様となっている。魔法工学科の集まりらしいから出張要員も魔法工学科でそろえてみた」
三田さんか。
残念ながら知らない名前だ。
そう思いかけて気づく。
新地研究室って、修先輩の研究室だよな。
とするとやっぱりこの注文主、グレムリンズの魔法パーティだ。
これは故意か偶然か。
まあいい、望むところだ。
出張料理用に持ってきたらしいちょっと浅いトロ舟が4つほど用意されている。
うち1つに米とか調味料とか冷凍エビとか材料が入っているようだ。
更に移動用の台車まで用意済み。
上等じゃないか。
僕は材料等の確認作業を開始する。
◇◇◇
4人で台車を押しながら魔技大へ。
実習室の前で女子学生が1名立っていた。
この人が三田さん、いや三田先輩かな。
「ちょっと待って下さいね。今は前のプログラムをやっているので。中の準備が出来ましたら連絡が来ますので」
中からおーっ!とか歓声が聞こえる。
グレムリンズの皆さんが魔法実践の公演中なのだろう。
なかなか盛り上がっているようだ。
「皆さんは高専の何学科の方ですか?」
「ここにいるのは全員魔法工学科です。こちらも魔法工学科の集まりとお聞きしましたので」
リュビカが答える。
「高専だと魔法工学科でも魔法が使える方が多いのでしょうか?大学からの魔法工学科だと魔法を使えない学生ばかりです。私も魔法が使えないので羨ましいです」
「今日来ている4人は魔法を使えますけれど、全体から見ると魔法を使えるのは半分位ですよ。留学生は魔法を使える人が多いですけれど」
「三輪も魔法を使えるようになったのは最近だよね」
「そうですね。夏休み位からです。今でも杖無しだと魔力的に厳しいですから」
そんな事を話していると内側からドアをノックされる。
「準備が出来たようです」
という事で扉を開けて中へ。
「それでは魔法調理の準備を致しますので少々お待ち下さい」
このアナウンスは沙知先輩だな。
そう思いながら準備を始める。
まあ準備と言ってもトロ舟と材料を並べるだけだけれども。
今回は魔法調理の過程を見せるのも目的らしいので。
ちょっと思いついた事があるので三田さんに頼む。
三田先輩は頷いて歩いて行き、そしてグレムリンズの1人を連れてくる。
「朗人、何やってんだ」
小声でそう言うのは愛希先輩だ。
「出前の注文を受けたら場所がここだったんです。ついでなんで協力お願いします」
そう小声で頼んでから三田さんに準備OKのサインを出す。
「それでは魔法調理の実演を開始します。後の作業台の方へお集まり下さい」
と皆さん集まってきたのを確認。
見たところ女性6割男性4割かな。
修先輩やグレムリンズも混じっている。
「この箱で調理するのでまずは中を綺麗にします。一応洗って持ってきているのですが念の為です。それでは炎の魔法使いさん、殺菌及び洗浄の魔法をお願いします」
愛希先輩が魔法杖を振るう。
ボッと一瞬炎が上がるがそれはきっと演出。
まあともかくこれで調理開始だ。
「それではまず、オムライスの中のチキンライス部分から調理します。
このお米、普通の無洗米ですけれどこれを……」
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