第256話 飲んべえ2人とさっぱり系で

 ちょこっとSNSでお願いメールを打っておく。

 修先輩宛だ。

 内容は簡単。

「申し訳ありません。泡盛のそこそこの奴を小瓶1本お願いします。年齢制限で買えません。料理用です」


 そして豚軟骨とか液状でビニル袋に入っているゆし豆腐とか。

 そんな地元系食材を色々買って。

 市場でも買い物をして17時過ぎに宿へと戻る。

 修先輩はもう帰っていて、そして720ミリの泡盛中瓶が3本並んでいた。

 それぞれ違う銘柄だ。


「すみません、こんなに色々」

「いや、きっと料理に使うだけでは済まなくなると思ってさ」

 残りはのんべえ用、了解です。


 そんな訳で料理に取りかかる。

 まずは今日食べたのと同じ豆腐汁から。

 豚軟骨は今日食べたのと同様にあっさり仕上げ。

 濃厚系が足りないという方用に三枚肉を黒糖と醤油ベースで泡盛使って煮たものも作っておく。

 魔法で高温高圧で煮込んで一気に冷やして圧力も下げきって、そして常圧に戻す。

 そうするとあら不思議、何時間も煮込んだ感じに。

 ゴーヤチャンプルは勿論ポーク缶で。

 沖縄そば用のつゆも仕込んでおいてと。


 今この部屋にいるのは僕、愛希先輩、修先輩の3人。

「修先輩は今日は1人ですか」

「ちょっと1人でぶらぶら散歩したくてね。ここからそのまま国際通りの逆の方へ歩いて行って、博物館とか壺屋通りのあたりをふらふらしていたな」

 微妙に通っぽい観光だ。


「他は由香里姉と翠先輩と香緒里ちゃんが北谷のアメリカンビレッジかな。朱里先輩と風遊美さんは言わぬが花とか言いながら消えていったから不明。ジェニーが北米組3人で沖縄のアニメ聖地巡り。OBはそんなところかな」


「ただいまー!」

 言わぬが花のOB2人組がお帰りだ。

 今日はちゃんと歩いて帰ってきているが、やっぱり酒臭い。

 そして2人とも明らかに泡盛が入っている紙袋を下げている。


「早くも一杯やってきたんですか」

 一杯どころじゃ無い感じだけれど。

 2人は玄関からキッチン横を通りテーブル席に座る。

 微妙に真っ直ぐ座れていないのが酔っ払いの証拠だ。


「真面目な工場見学ですよー。沖縄の伝統産業の」

「平たく言えば、泡盛の工場見学ですわ。試飲付きで」

 うんうん。

 全員で深く納得してしまった。


「そんな訳で胃に優しい食べ物をお願いします」

 うん、今日も風遊美先輩は絶好調で飲んべえモード。

 とりあえずテーブル上にごーやちゃんぷる、ゆし豆腐汁、てびち煮込み、沖縄そば小盛りを出す。


「ごはんがよければ言って下さい」

「飲みの〆にちょうどいいです」

 酔っ払い2人はずるずると食べ始める。


「うーん、何気にこうした方が今の気分です」

 風遊美先輩、そばにゆし豆腐を汁ごと入れる。

 更に上にごーやちゃんぷるを載せてかき混ぜ一気にすする。

「うーむ、なかなか今の気分です」


 あ、朱里先輩と、いつの間にか食卓に着いた愛希先輩が同じ事をし始めたぞ。

「確かにこれ、結構いけるよ。てびちもついでにイン!と」

「飲んだ後の胃にはちょうどいい感じですわ」

 確かに出汁は鰹で同系統だから合うかもしれないけれどさ。

 しかし魔技大魔法医療科が2人とも2日続けて酒ベロベロなんていいのだろうか。


 修先輩が苦笑しつつ口を開く。

「僕らも食べてようか。どうせ今日もきっと宴会だろ」

「そんな気配ですね」

「明日は頑張って早起きするぞ!明日こそ美ら海水族館へ行くんだ!」

 愛希先輩の宣言は実現するだろうか。


 そんな訳で。

 ついでに御飯も用意して。

 そして僕と修先輩も夕食を食べ始めた。

 他はなかなか戻ってこない。

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