第235話 トド撲滅対策会議

 開いている女性更衣室経由で露天風呂から、

「うおー、何だこれ。前より色々増えている!」

という奈津希先輩の声が聞こえる中。


 僕は今日、寮へ帰るのを諦めた。

 予想通りトドが大量増殖したのだ。


 5人程度なら毎度の事なのだが今回はその倍以上。

 勿論愛希先輩も典明ものたっている。

 まあ愛希先輩の現在地は露天風呂だけれども。


「考えてみれば。こうも食べ過ぎが増えたのも今年度になってからだ」

 とルイス先輩。


「確かに前は魚を釣りに行った時と、何かパーティとかやった時だけだったね。昨年度は魚祭りの時と旅行中とクリスマスだけだったし」

 修先輩もそんな事を言う。

 という事は。


「ひょっとしてトドが増えたのって僕のせいですか」

「食べ過ぎる方が悪いのだけれどな」

 そうだったのか。

 これが学生会ここの常態だと僕は思っていたのだけれども。


「あとは暗黒の1年、食生活が悪化したのが響いているかもしれないね。実際には量も質も普通だったんだけれどさ。奈津希先輩の料理の後だからやっぱりレベルが落ちた感じになるし。無制限おかわりも出来なくなったしね」

 確かに僕が炊飯魔法を編み出してからは一段とトド率が増えたよな。


「でもあの『御飯足りない!おかわり攻撃』を無視できる自信は無いですよ」

「無理だ」

 それにはルイス先輩もあっさり同意。


「どうせ詩織は足りなければ勝手に買い出ししてくるだろう」

「あの北海道のスーパーはお気に入りですよね」

 未だにあのにぎり寿司セットとザンギのパックは時々見かける。

 小腹が空いた時にちょっと買い出ししてくるらしい。


「更に4月からすぐ前にパン屋が出来るし」

「料理を減らすと絶対文句が出るだろうしね」

 トド減少対策会議の結果、見通しは暗いとの結論が出てしまった。

 そして。


「洗い場もとっくに空いたので早く来るですよ」

 詩織先輩がドアから覗いている。

 しょうがない。

 臨時トド対策委員3人とトド1人、何も特に気にしない1人は男子更衣室へと向かった。


「なお奈津希先輩、詩織と同じくらい要注意だから気を付けろよ」

 更衣室でもルイス先輩の注意が入る。

「今日はまだ酔っていないから大丈夫だろう」

「まあそうかもしれないですけれど。あの悪夢のエール、未だに夢を見るんですよ」

 ルイス先輩、そして修先輩に何があったのだろうか。

 そう思いつつ僕らは露天風呂へ。


 トドもそれ以外も、まあ自由に露天風呂を楽しんでいる。

 一番行き来が多いのは歩行湯とジェットバス、2種のサウナのあたり。

 クールミスト付きデッキで腹筋運動をしている人もいる。

 誰かを確認すると余分なものまで見えるので無視だ。


 中央奥に並んでいるトドも出来るだけ視界から外して洗い場へ。

 特にこっちに足を向けている方は絶対視界に入れてはいけない。

 ただトド置き場、いや寝湯は洗い場の隣だったりするのだけれども。


 そんな訳で僕が洗い場に座ったら、洗い場の壁が途切れた横あたりに。

 寝湯に横になっている愛希先輩の全身が見えたりする事もある訳だ。


 発育途上に見える愛希先輩もやっぱり女性らしい体つきしているなとか。

 ついお尻まわり中心に見てしまったり。

 いや、見えてしまったり。

 危険だやっぱりこの露天風呂は。


 僕が言える権利あるのか知らないけれど。

 トド駄目、絶対!

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