第236話 銀髪褐色の深窓の令嬢(2)
ダークエルフの村長であるエウレカと話したあと、俺はダークエルフの集落の空き家へと案内されることになり――。
「カズマ様。こちらが、用意した家になります」
「案内すまない」
「いえ。それでは、何かありましたら、ご用命を伺いますので、こちらの鈴を使ってください」
「グラカスの鈴か」
「御存知で?」
「ああ。ダークエルフが昔の族長が作った遠くまで高音波を発する鈴で、ダークエルフだけに届く鈴だと聞いたことがある」
まぁ、完全にゲーム内のテキスト通りなんだが――。
「なるほど……。カレン隊長が、カズマ様は、博識だと言っていましたが、外部に漏れない情報まで知っておいでとは――」
尊敬の眼差しというか熱い視線で俺を見上げてくる女ダークエルフ。
たしか、ゲーム内の設定では、この衣装から見てもステラで間違いないだろう。
騎馬に乗って情報工作を担当していた記憶がある。
「まぁな――」
「では、カズマ様、失礼します」
ステラは口笛を吹き、到着した馬に乗ったあと、俺の前から去っていった。
「さて……」
用意された一軒家と言うか、貝殻の巻貝のような建築構造の建物の中へと扉を開けて入る。
「マスター!」
「主様!」
「カズマ!?」
家の中に入ると、まず、すぐにリビングがあり、3人とも木材で作られた長椅子に座っていた。
「ただいま。エミリア達の方は異常は無かったか?」
「はい! それよりも、どうでしたか?」
エミリアが、心配そうな表情を向けてくる。
「問題なく話が進んだとは言い難いな」
「それは、ダークエルフ族のエウレカ様が謝罪を受け入れなかったという事でしょうか?」
「――いや。そうじゃない。ダークエルフ側は、此方の謝罪を受け入れる代わりに、ある条件を提案してきた」
「条件?」
「ああ。ワーフランドとの軍事同盟だ」
「それは、魔王に対抗するという意味合いでしょうか?」
「そうなるな」
「それなら、特に問題はないのでは? 今までのワーフランドでは、軍事力が足りず周辺諸国との軍事同盟を行うことなどできませんでしたし、何よりも相手国も人間側から排斥されている獣人国との同盟を求めていませんでしたから」
「――で、それに当たってダークエルフ族長のエウレカの方から、妹を娶って欲しいと要請を受けた」
「マスター! それは、妾に対する宣戦布告なのでは!?」
「そうですぞ! 主様! この地竜ッ! そのような要望は断固跳ねのけると進言します!」
「リオンとイドルには聞いていない」
「マスター!?」
「主様!?」
「それで、エミリアは、どう思う?」
「私としては、受けた方がいいと思います。――でも、正室は私ですよね?」
「もちろんだ――、というか、エミリアは、それでいいのか?」
「はい。王家の人間として、妻として――、強い雄に嫁ぐ以上、多くの雌が強い雄に媚びるのは普通ですから」
「そ、そうか……」
雄とか雌とか……、その辺の思考がエミリアは獣っぽいというか。
まぁ、別にいいけど……。
「そうなると、立場上、サーシャ・ボールドは、第二夫人という形になるのか……」
「マスター! 第二夫人は、この水竜です! リオンです!」
「もちろん第三夫人は、この地竜のイドル以外いないのだ!」
「いや、お前達とは種族自体異なるからな」
エルフの場合は、一応、ハーフエルフを作ることができるが、竜族との間だと、そんなの聞いたことがない。
そもそも卵生であるドラゴンと、胎生である人間では普通に考えて無理だろうに。
「マスター……」
「主様……」
そんな捨てられた仔犬のような目で見られても困る。
この二人は、俺が魔神だからと勘違いして信奉しているから、俺との婚姻に前向きなのは分かるが、流石にな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます