第65話 ハイネ城炎上!(12)

「LV1の風属性魔法。ウィンドカッター」


 俺は呟き、自身を貫いている氷柱を破壊する。

 そして、刺さっている氷柱を無視し――、体を無理矢理氷柱から引き抜く。


「ヒールLV10」


 回復魔法により、俺の体は瞬時に全快する。


『き、貴様!? 一体――!?』

「そうだ。忘れていた……」


 俺は視界内に映し出されている半透明のテンプレートを……コンフィグ画面を閲覧する。

 そこには時間が表示されており、パーティメンバーが死ぬまでの時間のみが閲覧されていた。


「あと8分22秒……」

『何を言っておる! 貴様は!』

「だまれ……」


 ――もういい。

 領主の約束はどうでもいい。

 金よりもエミリアだ。

 もし、目の前のアクアドラゴンを殺したことで、世界が魔王に支配されるようなら、俺が魔王を倒そう。

 何故なら、世界よりも俺にとってはエミリアが大事だからだ。

 それ以上も、それ以下もない!

 

 ――だから!


『神に対して無礼であるぞ! 人間の分際で!』

「黙れ……」


 俺は、もう一度――、そう……、もう一度だけ意思を込めて……覚悟を決めて相手の声をぶった切り叫ぶ。


「貴様を殺す!」

『血迷ったか人間! 人間ごとき矮小な存在に、神たる我を倒せるなど! 思い上がりも甚だしい!』


 アクアドラゴンは、澄んだ青い瞳を赤く染める。

 それは怒りからだろう。

 200にも及ぶ氷柱が、アクアドラゴンの周囲に形勢され――、俺に向けて一斉に放たれてくるが――。


「レベル9雷属性魔法! バレットソード・レールガン!」


 俺は、アイテムボックスから、1000にも及ぶダガーを空中に出現させると同時に、それらを、電磁力場を通し質量を持った弾丸として打ち出す。


 それは、レールガンを応用した魔法。

 次々と射出していくダガーは光の軌跡を空中に弾道として残し、アクアドラゴンの氷柱を全て迎撃していく。


『――な、なんだ!? その魔法は!?』


 全ての氷柱を迎撃しても、俺の周囲に――、電磁場を利用し空中に浮かせているダガーは落ちるような事はない。

 そして、俺にはアクアドラゴンの戸惑いの声を相手にしている時間もない。

 アイテムボックスから、両手剣――、グレートソードを取り出すと両手で柄を握りアクアドラゴンへと突っ込む。


『おのれ! 神に対して不敬な!』


 俺の頭上目掛けて振り下ろされてくる巨大な四肢。

 それを、俺の周囲に浮かせているダガーが――、「バレッドソード・レールガン」が吹き飛ばす。


『ガアアアアア。妾の足が!』

 

 千切れ吹き飛ぶアクアドラゴンの足。

 魔法耐性は高いという公式設定はあったが、それはアルドガルド・オンラインが実装されたころの話。

その時には、魔法はLV5までしか実装されていなかった。

 つまり! 高位魔法に耐えられるのか? と、問われれば、耐えられるかどうか分からないという所だ!

 現に、アルドガルド・オンラインがサービス開始して15年目に実装された新魔法は知らないらしい。


 アクアドラゴンは痛みと怒りで、俺目掛けて巨大なアクアドラゴンの尾を叩きつけてきようとするが――、


「LV7の火属性魔法! フレイムソード!」

 

 俺が携えるグレートソードの刀身は2メートル近い。

 その刀身が黒光りしていたが、赤い炎を纏う。

 そして――、刀身を振り下ろし、横薙ぎしてきたアクアドラゴンの尾を一刀両断する。


『ギャアアアアアアアアア』

「殺す、殺す、殺す!」


 時間の猶予はない!

 早く! 少しでも早く殺さなければ!




 ――称号『魔神』を習得しました。



 

 視界内の半透明のプレートにログが流れたが、いまは、そんな事はどうでもいい! 

 


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