第66話 ハイネ城炎上!(13)

「LV9の雷属性魔法! サンダークラウド!」


 アクアドラゴンの尾を一刀両断すると同時に、雷属性の攻撃魔法を発動。

 大空洞の上空に巨大な雷雲が作り出され――、1億ボルトもの大電圧を持つ雷と風速40メートルもの風が、大空洞内に吹き荒れる。

 岩盤や岸壁を根こそぎ破壊していき、さらに足元の水を伝い、俺やアクアドラゴンの細胞を焼き尽くし――炭へと変えていくが……。


「ヒールLV10を連打!」


 俺は、視界内の魔法カーソルを多重起動し、ヒールLV10を連打する事で即死する事を免れる。


『ガアアアアア。己! 人間! これを喰らえ!』


 紫色の十字架が、俺の頭上に降り注ぐ。

 それと同時に、俺は跳躍し空中に浮いている僅かな時間で「ヒールLV1」を発動し、アクアドラゴンが俺に掛けてきた「カーズ・ヒール」をキャンセルする。


『なん……だと……?』


 俺の対処方法に驚いているが、それは当然の帰結。

 呪詛魔法「カーズ・ヒール」は、敵対している者の回復魔法の特性を逆転させる効果がある。

 それは、アルドガルド・オンラインに存在していたアクアドラゴンの切り札とも言える対プレイヤー相手の魔法。

 それを解除する為には回復魔法を使うしかないが、大抵のプレイヤーは対処に失敗して自滅する。

 だが――、20年もゲームをやり込んだ俺にとって、その程度の対処は容易。

 さらに――。


「レベル9雷属性魔法! バレットソード・レールガン!」


 落下中に放った俺のレールガンは、アクアドラゴンが自身の回復を行う為に召喚した水の精霊を正確に打ち抜き刺殺――、爆散せる。


『――な!?』

「回復なんてさせねーよ!」


 さらに、超高圧に圧縮された数十ものウォーターカッターが俺へと向かってくるが、それらを全て最小限の動きで躱していく。

 頭以外は、ウォーターカッターで貫かれようと、今の俺は問題ない!

 目の前の! 目の前に存在するアクアドラゴンを殺す!


「てめーだけは殺す! エミリアに手を出した貴様は!」

『ば、馬鹿な!? たかが獣一匹で!?』


 3本の手足で巨体を支えることが出来ない水竜アクアドラゴンへと、天井から降り注ぐ岩盤を蹴り一呼吸の間に近づく。


「あとは! その首を落せば!」

 

 俺はグレートソードの柄を強く両手で握り絞め横薙ぎに振るう――、その竜の首に向けて!

 すると、キンッ! と、言う音と共に何らかの壁に阻まれる。


「くそが!」


 阻まれた一瞬の隙をつかれアクアドラゴンのコールドブレスで、半身を氷漬けされ――、岩盤に叩きつけられると共に、粉々に砕け散る。


『フハハハ! 致命的だな! 人間! それは、致命傷! ここで神たる妾と貴様の地力の差が出たな! 神を殺すためには神壁を突破することが必要不可欠! 人間に、妾を殺すことなぞ――「黙れよ……」――なっ!?』


 俺は、「ヒールLV10」を発動する。

すると一瞬で、砕け失った半身は元に戻り、俺は両足で水位が上がり続ける大空洞内に立つ事ができた。


『ばかな……。確実に、死ぬはずのダメージだったはず……、貴様は一体!?』

「俺か――、俺は、ただの冒険者だ!」

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