第71話 さあ、報復の時間の始まりだ!(2)

「あんたは……、生きて――」


 痛みから顔を歪めながら俺を見上げてくる皆月茜。

 

「ああ、生きていたさ。よくも、俺を裏切ったな……いや――、ちがうな! 貴様はっ! 貴様たちは、最初から俺を裏切っていたよなっ!」


 40歳を超えるまで生きてきたが、高校の時に3年間、虐めという暴力を振るわれた行為は、一瞬たりとも忘れたことはなかった。

 俺は力任せに地面の上を転げ土だらけになっている皆月の青白いモンスター化した細腕を全力で踏みしめる。


 それだけで直径20メートルの範囲がクレーターのように陥没し――、メキメキバキッ! と、言う音が耳に聞こえてくると同時に「キャアアアアアア」と、言う、絶叫が俺の鼓膜を揺さぶる。


「あ……あ……あ……」

「なんだ? あ! しか言えないのか? ヒールLV1」


 簡単に壊れて貰っては困る。

 俺の20年以上蓄積した怒りや憎しみ――、そして……この世界に来て裏切られ殺されかけた俺の怨嗟は、その程度では癒されない。


「あ、あんた! 田中一馬! どうして、これだけの力を!」

「煩い!」


 皆月の頬を右拳で殴りつける。

 整った皆月の顔の輪郭が崩れるほどの衝撃。

 それにより皆月は、地面と水平方向へと吹き飛び、大木にぶつかると同時に、大木が圧し折れる。

 さらに大木を貫通し、次の木々を破壊していく。


「どこまで飛ぶつもりだ? レベル9雷属性魔法! バレットソード・レールガン!」


 威力を落したレールガンを放ち、吹き飛んでいく皆月の両手両足をダガーで吹き飛ばすと同時に進行方向をズラす。

 そして――、皆月茜は大岩へと体をぶつけ真っ青な液体をぶちまけた。

 その姿を見ながら、俺は思わず笑みが零れ――、悠然と皆月に向けて近づく。


「な、なん……」

「ヒールLV1」

「カハッ! 田中っ! あんた何のつもりなのよ! こんな事をしてタダで済むと――痛ッ」


 俺は最後まで話しを聞かない。

 聞く必要すらない。

 俺は皆月の腹を殴り、心臓以外の内臓を吹き飛ばしながら口を開く。


「なあ。皆月、俺を虐めていた時は楽しかったか?」


 皮肉を込めて! 気持ちを込めて! めいいっぱいの憎しみを込めて! 俺は口にしながら、皆月の口を殴り、全ての歯を砕く。

 周囲には青い血が散り、地面を――木々を――草や花を汚していく。


「あっあうあうあう」

「よくわからんなー」


 とりあえず皆月の片目を抜き手で潰す。

 コリっと堅い感触があるが、それも握り潰す。


「いあやあああああああああああああああ」


 皆月の絶叫が森の中へと響き渡る。


「ヒールLV1」


 一瞬にして、皆月の体は完全な状況へと――、翼を含めて復元される。


「やめてっ……」


 痛みに耐えかねたのか、許しを請う皆月茜に俺の苛立ちは頂点へ!


「貴様は! この俺が止めてと言ったときに、やめたのか? お前は自分の友達とやらと一緒に、俺を裸にしたあと、写真をとってSNSで共有するばかりかネットにばらまいたよな? 社会的に俺を殺しにきておいて、いまさら謝罪? アハハハハハハハハッ」


 俺は思わず額に手を当てて大きく笑ってしまう。

 こいつが、俺にどれだけのことをしてきたのか――。

 それは人生でトラウマになるレベルのものだ! 

 そして、それは人として許される範疇を超えている。


「許す訳がねーだろうがああああ!」


 俺は、ウィンドカッターで皆月の両足を切断し、達磨にしてから胴体を蹴り飛ばし地面の上を転がしていく。


「おいおい、どうしたよ? ヒールLV1」

「痛い……、回復魔法……」


 俺は死ぬ前に即時ヒールを入れておく。

 死なれでもしたら、それこそ、こいつらの勝ちみたいなものだからな。


「や、やめって言っているでしょ!」

「おいおい、お前、もしかして高校の時に俺に言った言葉を忘れている訳じゃないだろうな? 虫けらの声は聞こえないって言ったよな!」


 修復したばかりの皆月の片足を踏み砕く。

 バキッ! と、言う大腿骨が折れる音が、靴底から伝わってくる。


 ――そして皆月の絶叫が、森の中に響き渡った。





 

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